結局、凡百な戦争映画に… アニメ映画 「この世界の片隅に」 レビュー

   

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

 上映開始日  2016年11月12日
 原作  こうの史代
 公式HP  http://konosekai.jp/

あらすじ
浦野すずこと「すずさん」は広島市江波に住む、ちょっと絵が上手な普通の女の子。
そんなすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄えていた。
見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。

評価点数 75点 ★★★☆☆(良作)

 

※ネタバレはありません(あってもPV以上のネタバレはないと思われます)

 

日常系アニメとしてみれば最高峰か

本作品、個人的に一番気に入っているのはPVである。
何も言わずにこのPVを見てほしい。

このアニメ、PVの雰囲気通りの日常系アニメとして見れば、完璧と言ってもいい完成度を誇る。

昭和の戦争に突入する直前から、戦時中の市民の暮らし、生き方を丹念に描き、がっつりと視聴者に感情移入させる。
戦争という我々が体験したことのない時代を生きる人々の生活を、我々が感情移入できるように描くというのは中々に難しい。

だから、普通の戦争ドラマを描く時、恋だとか、家族愛だとかを要素に入れて描く。
我々の時代にも共通するこれらのわかりやすいドラマ要素によって物語に感情移入させるのがセオリーである。

しかし、このアニメはこうした要素はほとんど描かないようにしている。
ラブコメ要素は若干入っているものの、それが物語の主軸になることはない。
結婚相手との出会いもドラマチックに描かれることはないし、結婚するときだって主人公は周りに流されてなんとなくで結婚してしまう。

こうした手法でも十分魅力的なアニメとなっているのは、やはり主人公のキャラの良さが大きい。

普通に可愛い、それが魅力

今作品の主人公である、すずさん、本当に地味なキャラ付けをされている。

一言で表すとしたならばドジっ子という表現になるのだが、その表現もアニメっぽい表現ではない。
一つのことをし始めると夢中になってしまって、注意力が散漫になってしまうと言ったところか。

また、見た目もわかりやすい美人として描写されていない。
それなのに、この子の動きから目が離せない。
とても可愛く思ってしまう。

それは、とてもこの主人公が「普通」だからだろう。
ちっちゃくて、のんびり屋で、優しくて、ちょっとドジ。
クラスに一人はいたような現実的なキャラだからこそ、我々もスッと感情移入できる。

更に、この作品の巧みなところは戦時中という要素をスパイスにしてあざとさを消して主人公の可愛さを描いていることだ。
戦争の時代に突入し、配給制度が始まり、防空壕が作られ始め…
そんなふうに非日常に少しずつ傾いていくなかで、すずさんの日常は相変わらずゆったりとした日常だ。

配給の量が少なくなったら、近所のおばちゃんから教えてもらった野草の食べ方を使っておかずを増やそうといろいろと悩みこむ。
少しまちの方に出掛たときに考え事をしていたら、道に迷い途方に暮れてしまう
相変わらずドンくさいし、全く戦争の臭いがしないすずさんの平和な日常が描かれていく。

普段ならあざとさを感じてしまう描写でも、我々の知る戦争の重苦しい雰囲気をなんとも思わずに行うすずさんの行動に、あざとさを感じることは全くない。
むしろこのすずさんの行動一つ一つが素直に愛おしく思ってしまう。

この戦争に突入していくときのすずさんの日常が個人的には非常にお気に入りだった。
主人公のくせに大して美人に描かれていなかったすずさんのことが、このパートに入っていくと凄まじい勢いで可愛く、魅力的に感じられた。
この前半の日常パートは非常に好意を持てたのだが…

 

結局劣化「火垂るの墓」になってしまうのか…

物語後半、米軍の爆撃が始まりすずさんの日常が物理的に、徹底的に破壊され始める。
話の雰囲気も今までのほんわかムードから一気に変わり、戦争映画の雰囲気となっていく。

この後半の展開が個人的にはどうしても好きになれない。
戦争の悲惨さを伝えるアニメ映画といえば、「火垂るの墓」が有名だが、個人的にはこの映画の後半の展開はそれの劣化版のような印象を受けてしまった。

もちろん、この作品は「火垂るの墓」と同じ道にたどり着こうとしているのではないというのはわかる。
あの作品ほど悲惨さを持った展開をするわけではないし、物語の結末を見てホタルの墓と同じ気持ちになることはないだろう。

だが、やはり自分がこのアニメに求めていたのはこれではないと感じてしまった。
戦争の悲惨さなどをテーマに反戦映画を作り、視聴者を魅了するのは非常に難しい。
何故ならば居並ぶ過去の名作たちを打ち倒し、反戦映画ならばこれ、と言われるようなクオリティを打ち出さなければ、人々の記憶に残ることは難しいからだ。

この作品もそれをわかって、前半は徹底して「日常」アニメとして描いてきたのだ。
「すずさん」という一人の昭和の女性に焦点をあて、描くことにチャレンジしたのだろう。
その中で、どうしても「戦争の悲惨さ」というものが絡んでくるのは必然だ。
これを描かずにすずさんの一生を描くのは難しいだろう。

だが、そこで戦争ドラマとしての描写を濃くしてしまったら、このアニメの前半はただの長いイントロになってしまう。
この作品が伝えたいのは何か、というメッセージ性が個人的にはブレてしまっているように感じてしまった。

あまりレビュー中に他作品との比較はしたくないのだが、同じ太平洋戦争を取り扱ったアニメ映画として宮崎駿監督の「風立ちぬ」とどうしても比較してしまう。
あれも戦争の悲惨さや、戦争中の悲恋をテーマにしたのではなく、堀越二郎という一人の「技術者」を描ききることで、他の凡百な作品にはない強いメッセージをこの世に送り出した。

この作品にも自分は同じような期待をしていたのだ。
堀越二郎のような「技術者」でもなく、山本五十六のような「軍人」でもなく、「すずさん」というどこにでもいる「平凡な少女」の一生を、彼女の能天気な「日常」を描ききることで、我々に他の戦争映画にはない強いメッセージを届けてくれるかと期待していたのである。
メッセージ、というよりも、この映画でしか見られない個性が欲しかったのだ。

これは非常に難しいことだろうと思う。
だが、多くの絶賛の嵐、「ただの戦争映画じゃない!」なんて声をネット上で聞いてしまったので、期待してしまったのだ。

残念ながら期待に裏切られ、多くの戦争映画のうちの一つという印象になってしまった。

 

戦争シーンにちょっとだけ難あり…?

ここからお話の全体的なレビューではなく、細か~な小言になってしまうのを許してほしい。

まず、一番言いたいのが「戦争」を扱うのだから、「戦争」に関するシーンの作画はもう少し気合を入れても良かったのではということだ。

個人的に一番ダメだろこれ、って思ってしまったのが、戦艦「大和」のショボさだ。
これは前半の日常パートに出てくるのだが、ここでガッと「大和」の異質さ、巨大さなどを描くことができていれば、すずさんの平凡な日常との上手く対比し、素晴らしい演出になっていたとは思うのだが…
遠くから大和を目撃、といった形での描写とは言え、あのショボさには少しだけがっかりしてしまった…

「火垂るの墓」で庵野秀明が描いた重巡洋艦の摩耶の方が迫力あるってどーなのよ!?

あとはこれは非常に個人的な趣味のお話になってしまうのだが私、戦争映画の爆撃シーンには小うるさい。
今回も太平洋戦争を取扱うだけあって爆撃シーンがある。
その小うるさい私だけに、今作の爆撃シーンに一点だけ許せない点が…

投下する爆弾をショボいCGで描くんじゃない!!

と、本当にどうでもよいお小言でした。

こうしたお小言を言ってしまったが、他のシーンは劇場アニメだけあって、迫力ある音響、作画となっている。
決して低予算感バリバリなシーンというわけではないのでご安心を。

 

名作、とまではいかないが、良作ではある。

各所では絶賛の嵐を受けているが、個人的にはやはり褒めても「良作」というカテゴリで収まってしまう出来だった。

すずさんの日常パートをほんのすこしのラブコメと、「戦争」というスパイスで彩りつつ、テンポよく描いた前半パートは「日常アニメ」としては傑作の出来であり、大好きだったのだが、後半の戦争パートに入っていくほどこの作品の個性といったものがなくなっていき、最終的には凡百な戦争映画として終わってしまったのが非常に残念であった。

主人公のすずさんは本当にかわいいので、彼女のかわいさを堪能しよう、くらいの軽い気持ちで見るくらいで見るのをおすすめします。


【PR】「円盤はお布施、実用は動画サイト」のすゝめ

アニメを一気見するとき、ひと昔前ではレンタルDVDが当たり前でした。
しかし、それも過去の話。
金額や効率を考えれば、「アニメ見放題動画サービス」の使い勝手が抜群です!

ということで、PR記事!
アニメ見放題サービスの特徴と、多数のサービスの中から「アニメを見る」ことに特化したお勧めをピックアップしてみました。
是非見てみて下さい!

アニメ見放題サービス徹底比較!「円盤はお布施、実用は動画サイト」のすゝめ


本記事が気に入ったら
イイネ!! をお願いします!

Twitter で
The following two tabs change content below.
ビッテンk

ビッテンk

熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

 - アニメレビュー, ドラマ , , , , ,