虚淵玄の真価が発揮された王道SFアニメ! 「翠星のガルガンティア」 レビュー

   

翠星のガルガンティア (Gargantia on the Verdurous Planet) Blu-ray BOX 1

 発表時期  2013年4月~6月
 原作  なし
 公式HP  http://gargantia.jp/

あらすじ
宇宙に進出した人類は「人類銀河同盟」を結成し、宇宙生命体ヒディアーズとの殲滅戦争を続けていた。
軍のパイロットであるレド少尉はヒディアーズとの戦闘から撤退する際に母艦のワープに巻き込まれ、人型戦闘機「チェインバー」に搭乗したまま未知の宙域に転送されてしまう。

レドが目を覚ますと、そこは滅んだはずの地球だった。
人々は海面上昇のため海上生活を慎ましくも送っており、チェインバーの中で冬眠していた彼は巨大船団「ガルガンディア」のサルベージ屋に海底から引き上げられたのだった。

レドのガルガンディアでの新たな生活が始まる…

 

評価点数:90点 ★★★★★ (名作)

 

※ネタバレはありません

 

素晴らしい完成度の第一話

まず、本作品の第一話のAパートにて描かれるのは、「ヒディアーズ」と呼ばれている宇宙怪獣と、人類の総力戦の様子だ。
主人公である「レド」はこの総力戦の中で一兵士として「チェインバー」と名付けられたロボットに乗って戦っている。

このAパートの完成度は凄まじく、このノリで1クールのアニメが作られても不思議ではないクオリティである。

さらに、このAパートの凄さは人類が絶望的な総力戦に巻き込まれている様子を的確に視聴者に理解させる点だ。
といっても、ナレーションなどの単調でつまらない展開によって説明するのではなく、臨場感あふれるスリリングな戦闘シーンと共に説明される。

画面に流れてくる映像の情報から視聴者が自然とこの作品の世界観をつかめるように描かれているのだ。

しかしBパートに入ると一転、ファンタジーっぽさを感じる美少女が元気よく動き回るシーンが入ってくる。
この少女こそが今作品のヒロインである「エイミー」だ。

Aパートの悲惨な雰囲気を感じさせない日常感の中で、彼女が目にするのは主人公が乗っていたロボット、チェインバーが横たわる姿だ。
明らかに彼女が住む日常の中には存在しない物質で作られた謎のロボット。
どんなに解体しようと衝撃を加えても一切傷がつかない特殊さ。
この異質感が凄まじいワクワク感を我々にも与えてくれる。

一方でレドの視点では、エイミーたちが話す言語を全く理解不能な言語として描写し、さらにそれを高速で分析し翻訳していくチェインバーのシーンが入るのだが、ここは実にSF感を感じられる良いシーンだ。

第一話の最後には、レドは現在地が地球であることを知り、視聴者は現在の地球の様子を言葉ではなくレドを中心にグルリと回るカメラワークによって知る。
そして起動したチェインバーと主人公、ヒロインとがはっきりと対峙する。

この第一話の引きは素晴らしい。

このワクワク感の原因は、やはり虚淵玄の脚本の妙であるだろう。
Aパートで示された殺伐としたSFな世界観を見せつけられた後、そんな世界に生きていた主人公が真逆の平和でファンタジーな世界に放り出されるのだ。
どうなるのかと気にならない者はいないだろう。

そして同時に、2つの異なる世界観で生きていた主人公とヒロインが出会って変化する物語ですよというこの作品の方向が暗示される。

個人的には隠れた虚淵玄の長所として、このようにグッと作品の世界に惹きつける物語の導入を書ける点があることだと思っている。
その意味では非常に虚淵玄らしい脚本の第一話であった。

 

SF設定を活かした「日常」アニメな中盤

このアニメ、ロボも登場するし、しっかりとしたSF設定もあるのだが、中盤の内容は「日常」アニメと言ってもいいだろう。

全く異なる価値観を持った主人公が、「ガルガンティア」と呼ばれる巨大船団で暮らていく様子を基本的に一話完結で描いていく。
当初は価値観の違いに対立したりするのだが、徐々に船団の一員として認められ、主人公も心境に変化が生じていく。

この過程を非常に丁寧に描いていおり、各話ごとに意味をしっかりと持たせているので捨て話が一切ない。

価値観の違いからの対立、なんて書くと重い内容ばかりかと思ってしまうが、シリアスな話だけではなく、ドタバタなギャグの話もキッチリ入れており、非常にバランスの良い内容になっている。

「ストーリーの続きが気になる」というより、「彼らの日常をもっと見たい」と思って次の話が見たくなるのは、素晴らしい世界観の上で生き生きと動くキャラ達をテンポ良く描いた「日常」アニメとしての高い質を保っているからだろう。

もちろん、「日常」アニメだからといって、ロボの存在やSF設定を無駄にしているわけではない。
色んな意味で圧倒的な性能を持つチェインバーはギャグにもシリアスにも大きく貢献している。
古代文明の謎、ヒディアーズとは一体、といったSF的設定も物語にサスペンス要素を与え、「引き」を作る重要な要素となっている。

こうした普通の日常アニメにはないスパイスを加えて視聴者を飽きさせないようにしているのだ。

何と言ってもヒロインのエイミーの可愛さ

色々と日常アニメとしての素晴らしさを唱えたが、このアニメ中盤の一番の魅力はヒロインの可愛さだろう。

近年稀に見る正統派ヒロインなエイミーは、文字で起こすとすごく地味なキャラ付けをされている。
元気で、明るくて、優しくて、でもほんの少し怒りっぽい。

ラノベヒロインのような濃いキャラ付けは一切されていないが、それでも素直に可愛い、魅力的だと思ってしまう。

彼女の可愛さの原因としては、よく動く作画だとか、声優の演技などもあるが、やはり一番は彼女と主人公の絡みだろう。

前述した通り、普通の暮らしを全くしたことない主人公のレド。
基本的に無機質な機械のようで、感情があまり感じられない。
そして「敵」と見なしたものを殺すことになんの躊躇いも感じない。

本来なら中々こうした主人公には感情移入するのが難しいのだが、第一話で見せられたあの悲惨なヒディアーズとの戦いを我々も見ているので、主人公の行動も納得出来てしまう。

そうした人間らしくない行動を起こす主人公はガルガンデイアの中で孤立するのだが、そんな中でエイミーだけは彼の味方をしてくれる。
レドのほんの少しだけ見せる人間らしさを見逃さず、彼のことを支えてくれる。

基本的に本当に「良い子」なのである。
あんなに優しくされて落ちない男はいないだろう。

こう書くとレドは救われてばかりのダメ男になってしまうが、決して彼はひ弱な主人公ではない。
元兵士だけあって決断力や身体能力は高いので、エイミーや彼女の仲間たちのピンチを幾度か救っている。
エイミーが好感を持つのに納得できるカッコよさをしっかりと持っている。

カッコいい主人公とカワイイヒロイン。
笑うことすら知らなかった男の子と、よく笑う女の子。
このレドとエイミーの二人のラブコメも凄まじく魅力的であり、二人のキャラの魅力を大きく上げるのみならず、作品全体の魅力も向上させている。

 

終盤のシリアスで少しダレるが・・・

中盤の日常パートは文句なしの出来である。
その後、レドの孤立、船団の危機など様々な問題が起き、日常からシリアスへ移行していく。

船団のキャラやレドについての掘り下げとしてのシリアスパートは非常に面白い。
しかし、クライマックスに向けてのSF設定の掘り下げとラスボスの登場が非常につまらなかった。

作中に一貫して存在していたヒディアーズの正体や古代文明の謎などのミステリー要素、SF要素が一気に解き明かされるのだが、この設定が別に衝撃的な設定ではなく、ぶっちゃけると若干「予測」できる。

ラスボスも予測通りであり、しかもあまり燃えない(個人的には)だった。

今まで理想的だったテンポも悪くなり、「ダレ」が見え始めたのだが…

 

全てを覆す熱い最終話

このアニメの評価、先程述べた終盤のダレもあって80点ぐらいが妥当なところだと考えていた。
しかし、最終話でその評価はあっさりと覆る。

まず、超王道な全員集合の展開にやられた。
今までの問題を乗り越え、主人公を助けに駆けつけて来る仲間たち。
中盤の日常パートが優秀で全キャラに魅力を感じていただけに、ここの展開の熱さは他のアニメとは段違いだ。

そして個人的にグッと来たのがヒロイン、エイミーの最終話での在り方である。
もちろん、普通な女の子なエイミーは戦闘には直接参加しない。
こういうヒロインに最終戦で役割を持たせるのは非常に難しい。

多くの脚本家がやってしまうのが、人質などでヒロインを「ピンチにさせる」だ。
そうすると最終戦でもヒロインを物語の中心に置くことは出来るし、燃える展開を作る事はできる。

だが、その方法には問題点がある。
それは、ヒロインに「お荷物感」を感じてしまうことだろう。
今まで順調に物事が進んできたのに、ヒロインのせいで台無し、というよりもマイナスになってしまうのがこのパターンだと非常に多い。
今まで好きだったヒロインにちょっとヘイトを感じてしまうという悲しいことになりかねない。

やはりヒロインというものはただ主人公に救われるだけではなく、主人公の支え、そして目的であって欲しいというのが個人的な理想だ。

この作品はそんな自分の理想を見事に叶えてくれた。
最終話ではエイミーは直接戦闘に参加しないものの、戦闘を補助する役割になっているし、必要不可欠な存在として描かれている。
この役割も、一話から描かれた「配達業をしている」を伏線にしているので、全く違和感はない。
もちろん、レドの戦闘の邪魔にもなっていないという、正に理想的な形で戦闘に関われている。

そして何よりも嬉しかったのが、ヒロインが最後に主人公に希望、目標を与えたことである。
ネタバレになるので詳しくは書けないが、最終話でのヒロインの登場の仕方、それを受けての主人公の決意などは素晴らしい描写なのでぜひ見てほしい。

最後の伏線回収、最高に熱い展開

そして最終話の最後に最高に熱い展開が待っている。

これもまたネタバレになるので詳しくは書けないのだが、最後まで見た方なら感づいてくれるだろう。
ラスボスを倒したあのキャラと主人公の別れ、そしてラスボスを倒すシーンだ。

今までの日常パートにて主人公と絆を育んできたのはヒロインだけではない。
今作品で描きたかったものの一つにはこのキャラとの「友情」だったということをはっきりと伝えてくる。

個人的には彼の最期はアニメ史に残る名シーンだと思っております(`・ω・´)

 

虚淵玄の天才さが光る王道物語

虚淵玄、と言うと悲惨な展開をさせる脚本家のイメージがあるが、個人的には彼の最大の魅力は今作品のようなド直球な王道物語を描ききることだろう。

終盤のダレ以外は本当に文句の付け所がなく、個人的には毎週ワクワクして見れた本当に良いアニメだっと思う。

蛇足だが、今作品は本当に虚淵玄の凄さを再認識した作品であった。
虚淵玄はメインの脚本家として関わっているのではなく、シリーズ構成としてこの作品に関わっている。
が、自分がベタ褒めした第一話と最終話だけは彼が直接脚本を書いているのに気づき、流石…と思った所存でした。

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ビッテンk

ビッテンk

熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

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