ハードボイルドに描かれる新たな五ェ門の魅力 「LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門」 レビュー

      2017/02/26

 発表時期  2017年2月4日公開
 原作  モンキー・パンチ
 公式HP  http://goemon-ishikawa.com/

あらすじ
伊豆沖を進む賭博船で、襲撃された鉄竜会の組長を救ったのは、若き用心棒・石川五ェ門だった。
だが直後に大爆発が起こり船が大破し、組長も命を落とす。
爆発の原因は斧を武器に使う大男だった。
一旦は男を追いつめた五ェ門だったが逃げられてしまう。
一方、賭博船から金を奪うことに成功したルパン三世と次元大介、峰不二子は、洋上のボートからその様子を目撃する。
船を爆破した男は「バミューダの亡霊」と呼ばれた男だった。
男の狙いはルパン一味の命だった。五ェ門も、組長の敵をとるために、その男を追っていく…

 

評価点数:84点 ★★★★☆(良作)

 

※ネタバレはありません

 

相変わらずハードボイルド

「LUPIN THE ⅢRDシリーズ」として、前作「次元大介の墓標」(レビュー済み)の続編として作られた作品である。
スタッフも前作とほぼ変わっていない。
続編とはなっているものの、前作を見てなくても理解出来る作りになっているのでご安心を。

 

前作から変わらず、作品の雰囲気は「ハードボイルド」な雰囲気だ。
前作ではルパンと次元はまだ「相棒」にはなっておらず、どことなく二人の関係も余所余所しかったが、今作品では次元とルパンは完全に「相棒」であり、そこに峰不二子もちゃっかり紛れ込むといういつものルパン一味が描かれる。
だが、カリオストロのような明るいルパン一味ではなく、落ち着いた大人なルパン一味が描かれる。

ルパンは不二子に一定の距離を置いて接しているし、ルパンダイブもない。
銭形警部もルパン一味に翻弄される情けない刑事ではなく、凄腕警察官として描写される。

画面作りも、しっかりと作品の雰囲気を重視して作りとなっている。
キャラデザから背景までしっとりと落ち着いた雰囲気を醸し出し、この作品が他のルパン作品とは違う雰囲気を持つことを伝えてくれる。

 

五ェ門を「ファンタジー」にしない作画の凄さ

本作品の主役は石川五ェ門だ。
彼の特徴といえば、なんでも切ってしまう斬鉄剣を手に、ラノベ主人公もびっくりな無双をすることだろう。

いつものルパン作品なら何も考えずに彼の活躍を描けばいいが、今作品ではそうはいかない。

作品の雰囲気はあくまで「ハードボイルド」だ。
そこにファンタジー作品のような強さを持つキャラがいてはならない。
あり得ない動きをする五ェ門を、できるだけ「リアルに」描写しなければならない。

そういう意味では、非常に戦闘シーンを描写するのは難しいのだが、今作品はこの難題をあっさりとクリアしている。
アニメーターから叩き上げの監督に、友永和秀などのベテラン作画陣がついているからこそのクオリティと言える戦闘シーンだ。
スローシーンや止絵の演出はごまかしに使うのではなく、ここぞというときの演出として使い、多用はしていない。
本当にアニメというのを理解しているのが分かる動かし方で、説得力を持って五ェ門のアクションシーンを作画している。

ぜひ、最高級のこの作画シーンを劇場の大きなスクリーンで見てほしい。
ヤクザ相手に五ェ門が無双するシーンは最高の芸術だ。

 

いつもの五ェ門、新たな五ェ門

今作品の五ェ門、序盤は頼りない。

ヤクザの用心棒として活躍はするものの、何かが足りない感じだ。
確かに強いんだが、こいつがいれば負けないという安心感がない。
まだ「青二才」といった印象がうっすらとだがある。
そう思いながら序盤は見ていく。

そんな五ェ門、やっぱり頼りなかった。
敵キャラにやられ、プライドがズタボロになり、フラフラになる五ェ門。
この時点で我々は結構なもどかしさを感じているわけだ。
五ェ門といえば最強の剣士として無双してほしい。
でも今作品ではいまいちパッとしない。

修行はしているものの、この修行がどういう結果になるか予想出来ない。
果たしてこれで敵キャラを倒せるのか。
我々が望む五ェ門になってくれるのか。
そんな思いで、ハラハラしながら見守る。

 

そうしたもどかしさ、ハラハラを抱えたまま、後編に突入する。
そこで、まさに「覚醒」する五ェ門。

その「覚醒」によって、今までの修行シーンが意味をなす。
ネタバレになるので詳しくは書けないが、個人的にとても納得のいった「覚醒シーン」であった。

そして覚醒した後の五ェ門は、まさに私達が思い描いていた五ェ門だ。

絶対的な強さ。
鋭い眼光。
何事にも動じない冷静さ。

前述した素晴らしい戦闘シーンもあって、滅茶苦茶カッコいいのだ。

今でパッとしない五ェ門に感じていたモヤモヤが大きい分、ここでの爽快感も格別だ。
期待していたとおりの五ェ門の活躍、カッコよさが最後に思う存分楽しめて非常に気持よかった。

 

この作品だからこそ出来る新たな五ェ門の魅力の描写

実は、この作品の五ェ門のカッコよさは他の作品とは一味違う。
他のルパン作品には出来ない「ハードボイルド」な演出で五ェ門のカッコよさを表現している。

 

それは「傷」だ。

今作品の五ェ門は傷一つ負わない最強の剣士ではない。
むしろ、傷だらけになる。

そしてこの傷の描写がえげつない。
切り取られた肉の断面図まで容赦なく描写される。
これは家庭を意識したほんわかなルパンには出来ない、「ハードボイルド」さを全面に出した作品だからこそできる描写だ。
そんなエグい傷を五ェ門は何度も受ける。

だが、それでも負けない。
傷を負っても眉一つ動かさず、相手を倒す。
その姿もまた、無傷の剣士とは違う魅力がある。
傷の描写がリアルにエグければエグいほど、それを受けてなお冷静に相手を切り倒す五ェ門の魅力がましていく。

作品の世界観を味方にして新たにキャラの魅力を引き出した、見事な演出であった。

 

最低限の描写で最大限の効果

個人的にこの作品のスタッフがすごいと思うところは敵キャラの描写だ。

今回も敵キャラは雇われの殺し屋である。
彼についての感動エピソードや掘り下げは殆どなく、あるのは二つ名と、殺し屋としての恐ろしさを伝える記録だけだ。

普通、これではただのヤラレ役として登場し、そのまま退場していくのだが、この作品のスタッフは敵キャラをそんな扱いにはしない。

まず、戦闘シーンでは彼の驚異的な身体能力を的確に「魅せる」描写をする。
数十メートル吹き飛ばされても無傷な体、次元の射撃すら防ぎ切る反射神経。
それらを簡潔に、あえて誇張せずに描くことで、現実的な世界に存在する「化物」として描写している。

こうした「化物」アピールは戦闘シーンだけではない。
食事シーンでは巨大な肉の塊を何個も食い続け、暴れまわったあとはどこであろうと倒れたように眠る。

さらに、どんなシーンでも彼は恐怖を見せない。
動揺を見せない。
まさに「化物」という印象を視聴者に植え付ける。

 

しかし、今作品の匠なところはここではない。
これだけでは、敵キャラを本当に「化物」としか視聴者は理解しない。
それでは、敵キャラに魅力を感じない。

今回の敵キャラ、人間らしさをかすかに残しているのだ。

例えば、それは葉巻である。
彼は、戦闘の前にかならず葉巻を吸う。
その仕草は非常に落ち着いていて、なんの恐怖も感じない。
普通の人間の行動だ。

なんともない描写だが、この描写があることで、我々は彼を一人の「人間の殺し屋」として認識する。
ただの化物ではない、知性を持っている人間と認識し、一人の「キャラ」として見ることができるのだ。
だからこそより恐怖しつつ、その恐怖にルパン一味が立ち向かう姿にワクワクする。

 

エピソードや設定なんかに時間を割かず、最低限の描写で魅力的な敵キャラを描く。
言うのは簡単だがこれを出来ているアニメ作品は非常に少ない。
作品全体の「ハードボイルド」さを上げつつ、全体の魅力を大きく上げる秀逸な描写と言えるだろう。

 

黒幕の存在の描写、嬉しいけど気になる…

前作は、黒幕の話などはなく、事件はきれいに解決して終わった。

意味深な描写があったが、それもファンサービス的なものかと思い、気にはならなかった。

だが、今作品では、思い切り黒幕の存在が示唆され、しかもそれは謎のまま終わる。
今作品の主眼はあくあまで五ェ門の覚醒にあるのだから、それは無視することなのだが、どーしても気になってしまう。

もちろん、これは次回作への伏線であり、このシリーズが続くことは非常に嬉しい。
だが、気になるものは気になる(笑)
前作が全て解決してきれいに終わった分、今作も五ェ門のカッコいい覚醒で終わって欲しかったのも事実だ。
ちょっとだけモヤモヤが残ってしまったのが残念だ。

 

ある程度のグロ耐性があるならば必見

前述した五ェ門の傷描写、かなりエグい。
ド派手な演出ではなくリアルな分、きつい人には結構きついかもしれない。

だが、それさえ我慢できればオススメ出来る良作だ。

「ハードボイルド」にカッコよく演出された五ェ門、必見の価値はある。

前作と同様に、高クオリティな作品を生んでくれたこの「LUPIN THE ⅢRDシリーズ」、非常に次回作も楽しみだ。


【PR】「円盤はお布施、実用は動画サイト」のすゝめ

アニメを一気見するとき、ひと昔前ではレンタルDVDが当たり前でした。
しかし、それも過去の話。
金額や効率を考えれば、「アニメ見放題動画サービス」の使い勝手が抜群です!

ということで、PR記事!
アニメ見放題サービスの特徴と、多数のサービスの中から「アニメを見る」ことに特化したお勧めをピックアップしてみました。
是非見てみて下さい!

アニメ見放題サービス徹底比較!「円盤はお布施、実用は動画サイト」のすゝめ


本記事が気に入ったら
イイネ!! をお願いします!

Twitter で
The following two tabs change content below.
ビッテンk

ビッテンk

熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

 - アニメレビュー, バトル , , , , , , ,