圧倒的な世界観、「惜しい」物語 アニメ 「龍の歯医者」 レビュー

   

 放映時期  2017年2月
 原作  舞城王太郎
 公式サイト  http://www.nhk.or.jp/anime/ryu/

 

あらすじ
舞台は “龍の国”。
主人公は、国の守護神 “龍”を虫歯菌から守る新米・歯医者の野ノ子。
隣国との戦争が激化する中、ある日彼女は、龍の歯の上で気絶した敵国の少年兵を見つける。
大きな災いの前に龍が起こすと言われる不思議な現象で、巨大な歯の中から生き返ったものだった。
彼を龍の歯医者として受け入れる野ノ子。
激しい戦いに巻き込まれながら、二人はやがて自らの運命を受け入れて行くことに…

 

評価点数:74点 ★★★☆☆(佳作)

 

 

とにかく魅力的な設定

本作品の特徴として、一番大きいのは独特の設定だ。

主人公は国の守護神となっている龍の「歯医者」だ。
この主人公の設定だけで視聴者の気を引かせる素晴らしい設定だろう。

そしてこの魅力的な設定を腐らせることなく、彼ら歯医者の日常の描写が更にこの作品の世界観に魅力を与えていく。

「歯」とは思えない巨大な龍の歯に、あまりにも小さな人間たちがブラさがり、掃除をしていく。
龍の歯から出てくるものは、あの世に向かう人間の感情、妖精のような菌、不気味な化物と、様々だ。

歯医者たちの装備や服装も和風ファンタジーらしさをしっかりと醸し出しており、魅力的だ。
歯医者たちがファンタジーな服装な一方、地上にいる普通の人々の文明は発達しており、第一次世界大戦時くらいの服装や武器を持っている。

この近代的な世界観の中に、「龍」というファンタジー要素が入り込んでいるのが非常に刺激的で面白い。
このファンタジーな存在がどう物語に関わってくるのか、それだけで作品に大きな「引き」を作っている。

 

世界観を表現する作画

この圧倒的な世界観を完璧に表現しているのがスタジオカラーの魅力的な作画だ。

まず、冒頭の艦隊戦のシーンからグッと世界に引き込まれる。
艦隊モノ、戦争モノとしても十分な魅力を出している戦闘描写だが、それを上回るインパクトで龍が登場する。

この龍の圧倒的な巨大感、存在感の描写は流石エヴァを作っているスタジオカラー製作だけはあると感じられる作画だ。

 

圧倒的なのはメカや龍の作画だけではない。

巨大な龍の歯を掃除し続ける龍の歯医者たちの描写も秀逸だ。
ヒロインを始め、各々のキャラの生活感が凄まじい。
彼らが正に「龍の上で」生活しているのだということを説得力を持たせて描写しているがこの作品の魅力を大き上げている。

戦闘シーンになっても、「よく動く」だけではなく、「面白い動き」を見せてくれる。
アニメでしか出来ないメリハリの効いた動きは後半の展開を大きく盛り上げる。

 

しかし、一番スタジオカラーらしさを感じたのは後編の終盤、巨大な液体状の触手が出て来るところだ。
もののけ姫のタタリ神を思いこさせる、CGを最大限に利用したウネウネ描写は圧巻だ。
こういう変態的な動きをするシーンが大好きな自分には非常に魅力的なシーンだった。

 

ボーイ・ミーツガールな王道物語

本作品の展開は一見ではとてもシンプルだ。

歯から現れた敵国の兵士が、龍の歯医者のヒロインと出会う。
王道なボーイ・ミーツガールの物語だ。

最初は心を開かなかった主人公だが、龍の歯医者としてヒロインたちと生活していく中で仲間意識が芽生え、「龍の歯医者」として成長していく。
この龍の歯医者の生活の描写は回想のような形であっさりと流されていくのだが、ここが非常に面白い。
主人公とヒロインの歯医者生活で、1クールのアニメを描けそうなほど魅力的だった。
ここがあっさりと回想で流されてしまうのは非常に惜しかった。

 

物語の後半では、ヒロインと一緒にピンチになった仲間たちを救うために活躍する。
しかし、このあたりから若干駆け足だと感じられる展開が多く、面白いことは面白いのだが、作品序盤から感じていたワクワク感から比べるとちょっと物足りない。

この物足りなさの原因は、やはりこの作品の根底にある「哲学的な要素」だろう。
この作品のテーマは「運命」「死」「輪廻転生」など、かなり重い。

主人公とヒロインの生き様、龍の歯という特別な舞台から、こういったテーマが伝えれるのだが、自分はこうした哲学的な要素よりも単純な「物語」がもっと見たかった。

押井守のように哲学要素を押し付けたりはせず、あくまで作品の雰囲気で匂わせている程度なので、全く作品に集中出来なくなることはない。

だが、前編、後編の2話しかなく、描写出来る尺は少ないのだから、こうした重いテーマの描写は最低限にして、主人公やヒロインのキャラの掘り下げに当てていたらもっとこの作品は面白くなっていたのではと思う。
魅力的な世界観に王道物語を展開する、それ自体は良かったのだが、あまりのも魅力的な世界観に製作者の欲が出たのか、分かりにくさが入ってしまったのが残念だった。

 

圧倒されたい人にオススメ

「圧倒的」という言葉がこの作品には似合うかもしれない。

設定、作画、演出、どれもが圧倒的な出来であり、魅力を持っている。
しかし、肝心の物語では、「惜しい」感じが漂う。
製作者たちが多くのメッセージを詰め込みたいがために、一杯一杯になって初見では中々物語に集中出来ない。

庵野秀明繋がりで、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を思い出す作品だった。
この作品も圧倒的な作画、演出、王道な物語ではあったが、時々入るメッセージ性のあるシーンのせいで作品に集中できず、個人的には名作とは感じれなかった。

この作品もそうした独特な世界観と重いテーマが隠された作品だ。
圧倒されることは間違いないので、こうした雰囲気が好きな人にはたまらない作品だったろう。

自分はそうした描写よりもキャラと物語を重視する人だったのでこの作品はイマイチという感想になってしまった。


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ビッテンk

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熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

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