まさかの傑作アニメ「タイガーマスクW」レビュー! 最終回の余韻が止まらない超優良作!
放映時期 | 2016年10月~2017年7月 |
原作 | 梶原一騎、辻なおき |
公式サイト | http://www.toei-anim.co.jp/tv/tigermask_w/ |
日本の小さなプロレス団体、ジパングプロレス。
東ナオトと藤井タクマは、そのジパングプロレスの練習生だった。
だが、彼らがデビューを飾ったその日、悪のプロレス団体「GWM」によってジパングプロレスは壊滅させられてしまう。
その復讐を誓ったナオトとタクマは、それぞれの道を歩み始める。
かつての「イエローデビル」を師に仰いだナオトは、タイガーマスクの仮面を引き継ぎ、敢えて虎穴に飛び込んだタクマは、タイガー・ザ・ダークとなってGWMのレスラーとなる。
二人の壮絶な物語が、幕を開けた……。
評価点数:88点 ★★★★☆(浮沈はあるが傑作)
※ネタバレを含みません
目次
尻上がりに加速する傑作
遂に終わってしまった……というのが、正直な感想だ。
ここまで最終回後のロス感が強い作品は、個人的に久しぶりである。
放映開始当初、恐らくほとんどの人が期待していなかったであろう本作は、多くの人のハートを鷲掴みにした超良作へと進化を遂げた。
自分的には2017年のアニメで最高の傑作である。(期間的には2016年開始だが)
序盤には忍耐が必要だ
とはいえ、物語序盤にはかなりの忍耐を要する作品ではある。
第一話の出来は悪くないにしても、作品の仕上がりは一話完結の昭和アニメ的な雰囲気を色濃く残す。
人間関係もそれほど錯綜するわけでもなく、非常に「シンプル」だ。
そこに加えて、第五話「ふくわらマスクの謎」第六話「アイドル×ヒール」の出来が非常に悪いため、このあたりでぶった切ってしまった人も多いのではないだろうか。
本格的な作品の開花は、主人公であるナオトとタクマ、二人の意思が交錯しはじめる第8話まで待たなければならない。
設定の段階で「負けるはずがない」レベル
この作品、同じ復讐を志した二人の主人公がそれぞれ全く別の道を歩み、それぞれでタイガーマスクとなるという、「これは面白いに決まってる!」というレベルの設定が全てだ。
その設定を破綻なく描破しているため、面白いに決まっている。
お互いがお互いをタイガーマスクであると知らずに戦いを続けるので、その二人が交錯するエピソードになると加速度的に面白さが激増する。
アツい展開の勝負エピソード
上述した設定も含めて、本作の優れたポイントは、
「勝負エピソードの破壊力」
にこそある。
個々のエピソード云々よりも、「見せ場」となるシーンの爆発力がキモだ。
様々な感情を蓄積しておいて、要所要所でドカンと来る。
これが「尻上がり」である最大の理由だろう。
いわゆる、「アツい」エピソードだ。
個人的に、世の中で言う「アツい展開」には二種類があると思っている。
それは、「当事者だけがアツい」のか「物語上でアツい」のかだ。
この二つは、日本語にすればなんだかよくわからないが、作中での盛り上がり方が全く違う。
例えば、単に主人公とライバルがアツい台詞をまき散らしながらバトルする。
主人公が終始劣勢ながら、気合と根性で最後に挽回する。
ボロボロになっても、勝ち目のまるで見えない戦いを続ける主人公。
神作画がそこに乗って、高揚感に溢れるバトルになる。
…………この展開は世の中的には「アツい」のかもしれない。
が、個人的にはこれだけではふつうのバトルシーンだ。
先述の二つで言えば、「当事者だけがアツい」シーンだと思う。
アツさのポイントは「そこに絡む感情の総量」だ。
上述の例で言えば、そのバトルに、どれだけのキャラクターの想いが載っているかに依存する。
囚われたヒロインを奪い返すバトルなら、そのヒロインのエピソードがそこに絡む。
そのヒロインを捕えたライバルの想いもそこに絡む。
そんなライバルとヒロインの気持ちを知る主人公の気持ちもそこに絡む。
バトルに関連する様々なキャラクターの感情が、そこに絡んできて、はじめて「アツい」と言えると思うのだ。
本作の勝負エピソードは、見事にアツい。
それは、その勝負エピソードのために、全体のシナリオが描かれているためだ。
勝負エピソードの時点で、シナリオによって貯めに貯められたナオトとタクマの二人の感情、この総量がけた違いな点が第一だろう。
二人の今までの想いや関係が、シーンごとに滲み出るので、必然的にその展開は「アツい」と呼ばざるをえない。
そして関連キャラクターの心情描写も、すべてがこの勝負エピソードに傾注するわけだが……惜しむらくは、その「関連キャラクターの心情描写」がそれほど巧みではないことか。
サブキャラクターの描写がもっと巧みなら、本作の印象度は問答無用で傑作の域に達しただろう。
何故か高い捨て話のクオリティ
3クールという長大な尺のためか、いわゆる「捨て話」的な、本編に絡まない話も多い。
本来なら癌となりがちなのがこの「捨て話」というもので、事実序盤においては結構なクオリティなわけだが…………。
なんか中盤からクオリティが飛躍的に上がる……。
全く本編に関係ない「捨て話」だとしても、かなり楽しんでみることができる。
立派なギャグ回だ。
「タイガーマスクでギャグ回なんて……」と思うかもしれないが、見てみれば全く違和感なく、本編の中に溶け込んでいるので、いい味が出ていると思う。
メリハリの強い作画は、勝負所では異次元
そんな本作において、作画の問題に触れないわけにはいかないだろう。
まず、全体的に作画が悪いというわけではない。
ただ、現在のデジタルアニメーションな感じが薄い、非常に独特な作画である。
アクが強い、と言ってもいいかもしれない。塗りが独特だ。
動くかと言われれば、「タイガーマスクの試合のときは動きます」というのが正解だw
日常シーンやどうでもいい選手の試合時には、かなり動かない(汗)
少なくとも、現代アニメの一般的な水準から見れば、決して作画が良いとは言えないだろう。
だが、勝負どころの作画は圧巻だ。
予算の都合なのだろうが、「動かすべきところ」を見定めて勝負してきている感じがある。
序盤からタイガーマスクの試合はきちんと動く。
派手というよりはとにかく構図がカッコよく、ローリングソバット一つでプロレスファンなら悶絶できるはずだw
ザ・サードに至っては、ただ歩いているだけで全く異質。
最終回は最初から最後に至るまで異次元レベルにヌルヌル動くw
全体を通じて安定しているわけではないのだが、魅せばでは「魅せれる」作画を、ゴリゴリとねじ込んでくる。
総括すれば、魅力的な作画であることは疑いない。
最大の欠点は淡泊な試合展開か?
唯一欠点を上げるとすれば、肝心のプロレスシーンそのものだろう。
全体的に淡泊で、あっさりとまとめ上げられている。
作画の(予算の)都合もあるのだろうが、とにかく試合シーンは短い。
一話完結となる序盤にはそれほど違和感ないのだが、決戦となる試合でも10分程度であっさりと終わってしまう。
これは物語を見やすくしている要素でもあるのだろうが、「プロレスの面白さ」というものを視聴者に伝えられるような展開ではない。
せっかく「アツい」展開で魅せても、その後の試合があっさりと終わりすぎてしまうこともある。
これは大きなマイナスポイントだと思う。
この原因は恐らく、対戦相手にあるのだろう。
基本的にポッと出の敵と戦うので、物語の盛り上げようがないわけだ。
GWMサイドのレスラーは深く掘り下げるわけでもなく、「ザ・悪役」に徹している。
感情の錯綜がないバトルは、淡泊にならざるをえない。
唯一、タイガー・ザ・ダークを除いては。
後は、タイガーマスクの必殺技がなぁ……。
打撃系も悪くはないが、やはりプロレスの必殺技と言えばフィニッシュホールドなわけで……と拘ってしまうのは、単に中学時代にドラゴン・スープレックス・ホールドやタイガー・スープレックス・ホールドに憧れた青春の名残なんでしょうか……?
最終回の余韻が止まらない傑作
そしてこれだけは触れておかなければならないのですが、最終回はあまりにも神回でした。
作画から何からすべてが異次元に昇華し、一話完結の見事なストーリーを見せてくれる。
こんなに感動したのは、私がハルナちゃんの信徒だからなのだろうか……w
是非続きが見たいです。
お願いだから続き作ってください。
しかしこれ、円盤出るのだろうか?
調べたけど発売予定的なのが一切ないんだよな。
次回作のためにお布施しても良いレベルなんだけど……|д゚)チラッ
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セトシン

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