「尊い」と素直に思える名作。 「宝石の国」 レビュー!
2019/06/30
放映時期 | 2017年10月~12月 |
原作 | 市川春子 |
公式サイト | http://land-of-the-lustrous.com/ |
あらすじ:宝石たちの中で最年少のフォスフォフィライトは、硬度三半とひときわ脆く、靭性も弱くて戦闘に向かない。
また、他の仕事の適性もない。そのくせ口だけは一丁前という、まさに正真正銘の落ちこぼれだった。そんなフォスに、三百歳を目前にしてやっと初めての仕事が与えられる。
それは、博物誌編纂という仕事。
地味な仕事に不満なフォスだったが、彼はその目で世界を見、様々なことを経験する中で、しだいに大きなうねりに飲み込まれてゆく。
評価点数:87点(良作) ★★★★☆
※ネタバレはありません
目次
圧倒的映像美
このアニメの最大の特徴は、やはり映像にあるのだろう。
最近のアニメCGの進化は凄まじく、多くの作品がCGで描かれるようになってきた。
CGによるアニメーションは賛否両論になることが多いが、今作品の場合はCGアニメーションが作品の質をグッとあげている。
今作品の登場キャラクラーは皆普通の人間ではなく、体が宝石で出来ている(髪の毛でさえも宝石で出来ている)
つまり、無機質なキャラクターなのである。
そのキャラクターの宝石の質感、輝き、そして無機質さをCGアニメーションで見事に表現している。
この表現はCGアニメだからこそ出来る表現だろう。
無機質、淡白、そう言って色々と非難されることが多いCGアニメを、作品の雰囲気に上手く当てはめ、見事に作品全体の質をあげている。
また、CGアニメだからといって、戦闘シーンに迫力がないということはなく、可憐な姿のキャラたちがスピィーディに動く戦闘シーンは、非常に魅力的である。
ただ単に早く動かせば良い、という雑な演出ではなく、CGアニメで出しづらい迫力を、いかに出すかを考えられたカメラワークによって、戦闘シーンは非常に魅力的になっている。
しかし、本当のこの作品の魅力は、魅力的なキャラ達が作りだすドラマにある。
王道物語のようで、そうでない物語
本作の主人公、フォスフォフィライトは、いわゆる「落ちこぼれ」だ。
「月人」と言われる敵との戦闘が出来るほど頑丈ではなく、壊れた仲間の修理を出来るほど手先も器用ではない。
他のキャラはそれぞれ役割を持っているのに、主人公だけが役割を持ってない落ちこぼれである。
こういう主人公を見て自分が想像したのは二通りの物語だった。
主人公が這い上がっていく熱血物語。
弱い主人公が陰湿ないじめに合ったり、恋しちゃったりするような人間ドラマを描いた物語。
しかし、今作品は、こうしたある意味テンプレ的な展開にはならない。
それは何故だろうか。
自分は、登場キャラが全員人外だから、という結論に達した。
彼ら(彼女ら)は、老いることなく、何百年も生きる。
月人以外に命を脅かすような脅威はない。
そんな世界に住む登場キャラは皆、独特の雰囲気を持っている。
だからといって、あからさまに非人間的なキャラがばかりではない。
みんなそれぞれ魅力的な個性を持っているし、感情はある。
女性らしい可愛さだってある。
ただ、どこか普通の人間とは違うのだ。
そしてそれは作品全体、物語全体に影響している。
これは視聴してみないと分からないだろう。
一番人間らしい、主人公
そんな中、一番人間らしいのが主人公であるフォスフォフィライトである。
ダメダメなくせに、あきらめず、明るく、おせっかい。
能力的な面だけでなく、性格的な意味でも少し彼女は異質だ。
この主人公、特別な魅力があるわけではないのだが、何故だが目を離せない。
非力という設定もあるだろうが、それだけでは説明出来ないくらい不思議な魅力を持っている。
黒沢ともよさんの独特な演技のせいだろうか。
そんな彼女に関わっていく中で、周りの登場人物も変化していく。
彼(彼女)らは基本的には変化しない。
それは見た目だけでなく、性格においても、普通の人間とは違う、達観した感覚を少なからず持っている。
しかし、異質な主人公と過ごす中で、少しずつ変化していく。
それと同時に、主人公もまた変化していく。
自分自身の能力のなさに絶望したり、この世界の苛酷な仕組みを呪ったり…
しかし、それでもめげずに生き続けていく。
本作品の一番の魅力は、人間的な主人公と周りのキャラが生み出すドラマ、そしてそれを経て成長する主人公の姿にあるだろう。
「尊い」という形容詞がぴったりな関係
最近のネットスラングというか、主に女性オタクの間で使われる用語として、「尊い」という形容詞がある。
これはカップリングやキャラの絵やシーンに対して使われる感想なのだが、今作品の主人公と他の登場人物の関係を表すとしたら、この言葉がぴったりだろう。
自分の新たな役割を心の奥底では探している、シンシャ。
他人を傷つけてしまう能力を持つ自分に臆することなく近づき、シンシャに新しい役割を必死に見つけようとする主人公に、少しずつ心を開いていく。
冬の間、先生と一緒に二人だけで巡回を続けていたアンタークチサイト。
冬眠しない主人公にイライラしつつも、必死に努力する主人公を見て少しずつ情が移っていく。
こうした主人公と、他の登場人物との関係は文章にしてしまうと意外と呆気ないものだ。
しかし、前述したCGによる画面と、宝石の登場人物達が作り出す世界観によって、思わず仰ぎ見るような、神秘的な雰囲気を作り出すことに成功している。
このキャラ達の関係をもっと見てみたい、壊したくない。
そうした思いを強く持つことが出来る。
だから余計に物語から目が離せない。
そして、それはシリアスな構成になっていく後半になればなるほど。
世界観に向き合うシリアスな展開
ぼんやりと視聴者が世界観を把握し、疑問が生じてくると、その疑問を解決させてやろうと言わんばかりに、後半に入ると作品世界の鍵となる設定に対して物語が向かう。
月人と言われる敵の正体、「人間」という存在…
そうしたミステリアスな展開が後半から展開される。
前述したキャラの魅力も相まって、どんどん物語に惹き込まれる。
そして、月人も徐々に強化され、戦闘シーンも緊迫感を増していく。
序盤と違い、キャラに愛着がある分、余計に画面から目が離せない。
この後半でのシリアス化を象徴するのが、主人公の変化だろう。
明るく、能天気だった主人公フォスフォフィライトが、どう変化してしまうのか。
それは是非、自分の目で確かめてほしい。
前半の彼女が明るかった分、衝撃は凄まじい。
この変化について最も自分が驚愕したのは、全く別の雰囲気を放ちながらも、フォスフォフィライトっぽさを失わせない声の演技をやり遂げた黒沢ともよさんの演技力だったのだが。
脚本、設定、キャラ、作画、全て優秀な良作
アニメにおいて重要とされる(と勝手に思っている)
脚本(構成)、設定(世界観)、キャラ、作画。
それら全てが優秀なのがこの作品だ。
独特の世界観とキャラ、それを見事に伝える作画(CG)、そしてその世界に完璧に視聴者を惹き込ませる脚本。
全てが水準以上を叩き出した良作だ。
ただ、問題が2点だけ。
一つは、序盤に余り面白さを感じづらいということ。
独特の世界観とキャラ達(しかもかなり多い)が一気に描写されるため、少しついていくのが難しい。
また、物語として劇的な展開が序盤に用意されているわけではないので、一気に惹き込まれるということがない。
製作者もそれを分かってか、シンシャというキャラと主人公との関係に序盤は焦点を置かれている。
この二人の関係性に最初に魅力を感じるかどうかというのがこの作品にハマるかどうかの分かれ目だろう。(自分はドハマリした)。
二つ目。
めちゃくちゃ良い所で終わるという点である。
お願いだから二期を作ってください…
そう思わせる終わり方だ。
間違いなく原作購入がセットとなるので、今金欠の人にはオススメ出来ないかもしれない(笑)
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ビッテンk

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