アニメだから描ける、本当の青春と感動 「宇宙よりも遠い場所」 レビュー

   

放映時期 2018年1月~3月
原作 なし
公式サイト http://yorimoi.com/

あらすじ
何かを始めたいと思いながら、中々一歩を踏み出すことのできないまま高校2年生になってしまった少女・玉木マリ、通称キマリは、とあることをきっかけに南極を目指す少女・小淵沢報瀬と出会う。
高校生が南極になんて行けるわけがないと言われても、絶対にあきらめようとしない報瀬の姿に心を動かされたキマリは、報瀬と共に、「宇宙よりも遠い場所」、南極を目指す…

評価点数:90点 ★★★★★ (名作)

 

「青春」

この作品のキーワードは、「青春」である。

物語の主人公は、普通の女子高生だ。
ただ、普通の生活から脱却するために、高校に入学したときに、青春をする!と宣言する。

この主人公の微笑ましい行動力が、序盤では描かれる。
青春をするために、学校をサボって一人旅を計画をしたりするのだが、決行する直前にビビってしまい、結局普段通り登校してしまう。

そんな小心者で、中々踏み出せなかった主人公がある少女と出会うことで物語が動き出す。

それは、女子高生でありながら、南極へ行くと宣言している、変わり者の美少女だった。

 

この2人にさらにもう2人、合計4人の個性豊かなを女子高生を中心に、南極に上陸するという、到底不可能な目標を達成するために、様々なドラマが描かれるのがこの作品だ。

 

そもそも「青春」って何か

青春~というカテゴリの作品は非常に多い。
青春と恋愛。
青春とスポーツ。
様々なジャンルに、青春という言葉が掛け合わされ、作られている。

では、この「青春」とは、一体どういうことを意味するのだろうか。

 

辞書的だったり哲学的な意味は置いといて、自分の物語における、青春の定義とは以下のようなものである。

「未熟なキャラが、大きな目標に向かって進む成長物語」

である。
この目標というのが、恋だったら恋愛青春作品。
スポーツにおける結果だったらスポーツ作品となる。

 

ただ、「未熟な」という部分がポイントだと思っている。
基本的に、こうした作品の主要な登場人物は、成長しきった人物ではなく、まだまだ未熟な点が多い。

そうした何かに対して「青い」人物(年齢に関係なく)が、目標に向かって精進していくうちに、成長するのが「青春作品」だと自分は考えている。

 

そういった意味で今作品は、青春作品のお手本のような作品だ。

主要な登場人物は年齢的にも、精神的にも若い。
若さゆえの、純粋さだったりというのを持っており、それだけで非常に魅力的なキャラだ。
そんな彼女らが、南極へ行くという目標に向かって、様々なドラマを経て、成長していく。

このドラマの描き方が完璧だ。

その完璧な要素を一つ一つ見ていこう。

 

アニメだから活きる物語。

青春作品をアニメで描こうとすると、多くの場合は実写でよくね?という結論になる場合が多い。

むしろ、実写のほうが場合によってはより効果的なこともあるだろう。
青春作品にとって必要なのは、共感できるキャラ、シチュエーションであり、それは現実の舞台、人物を使った実写作品のほうが実現しやすい。

 

しかし、今作品では、アニメという媒体で作る理由がハッキリとある。

それは、「女子高生でありながら、南極を目指す」という作品の目標を描くためである。
この目標は、実写で描写するのは非常に難しい。

 

まず、予算的な問題である。
南極の風景を実写で取り入れようとしたら、現地で撮影を行うか、CGによる合成が必須だ。
しかし、アニメならば、中世ファンタジーの舞台を描くのと同じように、南極の背景を描いていしまえば良い。

 

こうした予算的な問題以外にも、アニメである効果は大きい。
その一つが、非現実感を武器にできるということだろう。

青春作品において必要な共感力、現実性。
実写で無茶苦茶な設定をつくってしまうと、これらを壊してしまう。
なまじ現実の役者、舞台を使っている分、現実感への欲求が高い。

少しでも非現実的な設定や展開があると、一気に冷めてしまう。

一方、アニメ作品では、こうした現実感への要求が少ない。
非現実の世界だから、と割り切れる。

 

ただ、この作品は、決して南極へ行く過程をメインに据えているわけでもないし、南極での生活を伝えることがメッセージのドキュメント作品でもない。

あくまで、女子高生たちの青春を描きたいのである。

だから、南極関連の描写は、非現実感を最小限にするために、できるだけ少なくしている。
南極行きが決まる過程も割とあっさりとしている。

これらで節約した時間を、全て登場人物達の動きや心情を描写するのにあてている。

そして、一番時間を割いて描かれるこれらの描写に矛盾はないため、視聴者はしっかりと作品世界に没頭することができる。

 

どういう作品なのか、というのをハッキリと伝える第一話

なので、この作品に南極へ行くための政治的駆け引きや、女子高生たちの南極でのサバイバル生活を期待しても、何も得るものはない。

この作品が描きたいものは、冒頭で書いたように、「青春」である。
それを描くための道具として「南極」というキーワードが登場するだけだ。

 

このメッセージは、第一話からハッキリと感じる事ができる。
普通、南極に行くことがメインの作品なら、主人公は絶対に南極に行きたい少女だ。
実際、今作品にも母親が南極探検隊だった、そういうキャラは登場する。

しかし、主人公はそういった特別なバックグランドを持った、南極に行きたい人物ではなく、「青春がしたい」普通の女子高生なのである。

そんな彼女が、青春を体験をする作品です…!
そういうメッセージが、第一話からビンビン発信されている。

具体的には、主人公によるナレーションによる青春への期待だったりと、細かいテクニックである。
この期待感は、実際に視聴して頂ければ分かるだろう。

 

巧みなキャラクター作り

この作品の魅力は何と言っても丁寧なキャラクター作りだろう。

メインとなるのは、女子高生達4人である。
それ以上キャラを増やしたりはせず、主役はあくまでこの4人しかいない。
この少ない人数に焦点を当てて描いているため、1クールしかない作品でも、しっかりとキャラクターのエピソードや特徴を描いている。

 

また、彼女ら4人のキャラの作り方も非常に魅力的だ。

それぞれのキャラに短所・長所がしっかりと描かれており、それをキャラが互いに補っている。

行動力(だけ)しかないキャラ。
明るさと優しさはあるがズボラなキャラ。
芸能人でしっかり者だが、臆病でコミュ障なキャラ。
純粋で、ひたすらに前向きな主人公。

この4人の絶妙なチームワークは、なんとも言えない安心感がある。

 

濃いキャラではないが良いキャラな主人公

こうして4人の紹介をすると、少しだけ主人公のキャラが薄い気がする。

それは間違っていない。
しかし、主人公として、この作品のキャラとして非常に良いキャラだと感じている。

まず、しっかりと共感できる人物である。

芸能人でもないし、特別な生い立ちでもない。
ただ、青春がしたい女子高生だ。

その点で、こうした青春作品の主人公として、合格点である。
しかし、それだけでは、地味なキャラで終わってしまう。
何が主人公としてふさわしい要素なのか。

 

それは、「純粋さ」だと思う。

他の3人の誰よりも純粋で、中立的である。
だからこそ、一歩引いた視点で見ている私達のやってほしいことをやるし、他の登場人物からも、好かれる。

良い主人公だったと思うのだが、残念だったのは、明確な成長が描かれていなかった点である。

他の3人が物語を通してしっかりと成長しているのに対し、主人公の成長の実感はもう少しあっても良かったのかなと思う。

 

悲しみではない、感動。

こういった青春作品のありがちな感動シーンが、誰かの死や悲しい境遇への同情で、感動シーンを作ることだ。

個人的にはあまりそういう作品は好きではない。
人が死んで悲しいのは当たり前だし、それは心が示すある種の「反応」であって、本当の「感動」ではないと考えている。

 

今作品の感動シーンでは、そういった悲しみによる涙は存在しないといって良い。

自分が考える最も純粋な感動が、今作品の感動と言えるかもしれない。

 

それは、「目標の達成による感動」である。

「南極へ行く」という大きな目標をはじめ、作中には様々な目標が出てくる。
それは友達をつくる、という小さな目標かもしれないし、母親の死の実感という重い目標かもしれない。

だが、その目標に向かって登場人物たちはひたむきに努力する。
先述したように、非常に魅力的なキャラなので、自然と感情移入し、彼女らを応援している。

だからこそ、彼女らが必死に追いかけていた目標が達成された時に、自分たちも感動する。
涙がでる。

 

魅力的なキャラが、それぞれそのキャラらしく、目標を追いかけることで、生まれる感動。
これこそがエンターテイメントの醍醐味だと自分は思う。

 

妥協なしの素晴らしいアニメ

脚本、演出、作画。
全てにおいて、女子高生4人の青春を描くために注がれており、それが見事な青春エンターテイメントとなっている。

あまりこういった作品に感動するほうではないのだが、今作品では非常に感動するシーンが多く、思わず涙がでるシーンも多かった。

自分の中の、青春作品というカテゴリ自体の価値をあげてくれたような気がする。

多くの人にオススメできる名作だろう。

 

惜しい点があるとしたら、もっと長いアニメで、丁寧に描かれたらこの作品の破壊力は更にすごいことになっただろう。
そして、もっと(良い意味で)ぶっ飛んだキャラが、この作品にいれば、より記憶に残る作品となっていたかもしれない。

 

最後になってしまったが、
「宇宙よりも遠い場所」
という素敵なこのタイトルが、自分は一番好きだ。


【PR】「円盤はお布施、実用は動画サイト」のすゝめ

アニメを一気見するとき、ひと昔前ではレンタルDVDが当たり前でした。
しかし、それも過去の話。
金額や効率を考えれば、「アニメ見放題動画サービス」の使い勝手が抜群です!

ということで、PR記事!
アニメ見放題サービスの特徴と、多数のサービスの中から「アニメを見る」ことに特化したお勧めをピックアップしてみました。
是非見てみて下さい!

アニメ見放題サービス徹底比較!「円盤はお布施、実用は動画サイト」のすゝめ


本記事が気に入ったら
イイネ!! をお願いします!

Twitter で
The following two tabs change content below.
ビッテンk

ビッテンk

熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

 - アニメレビュー, ドラマ , , , , ,