圧倒的なガンダムの存在感 「機動戦士ガンダム00 1st season」
2019/06/27
放送時期 | 2007年~2008年3月 |
原作 | なし |
公式サイト | http://www.gundam00.net/tv/ |
あらすじ
人類は新たなエネルギーを手に入れていた。
3本の巨大な軌道エレベーターと、それに伴う大規模な太陽光発電システム。
これを所有する3つの超大国群、『ユニオン』、『人類革新連盟』、『AEU』が存在し、冷戦構造をみせていた。
そんな終わりのない戦いの世界で、「武力による戦争の根絶」を掲げる私設武装組織が現れる。
モビルスーツ「ガンダム」を所有する彼らの名は、ソレスタルビーイング。
ガンダムによる全戦争行為への武力介入がはじまる。
評価点数:92点 ★★★★★
目次
3本柱がしっかりとしている作品
自分が、ガンダムのようなSFロボット作品を見る時に注目しているのが、3つである。
ロボの存在感、SF設定を含めた世界観、キャラクターの成長(これは全ジャンル共通だが)。
この3つ全てが、本作品は非常に構築が上手い。
それぞれこの作品はどういった部分が優れているのかを、みていきたい。
ガンダムの存在感
まず、ロボの存在感。
今作品が特に秀でいているのは、主人公たちが乗るガンダムの作中での存在感の出し方である。
今作品のガンダムは、本当に「特別」なのである。
今作品のガンダムという存在は、今までのガンダム作品のような、「最新鋭機だから特別」なのではない。
もちろん、最新鋭機なのは間違いないのだが、そこがガンダムがガンダムたる所以ではない。
主に、今作品は2つのアプローチからガンダムを「特別」にしている。
SF的な特別
本作品の世界では、軍事力の主力は、MS(モビルスーツ)という巨大人型兵器である。
その中で、ガンダムが特別なのは、SF的な設定である。
他のMSと違うのは、ガンダムの動く動力が、「太陽炉」といわれる特殊なエンジンなのである。
そこから生まれる粒子によって動いており、バーニアなどの従来のMSの駆動と、見た目からして明らかに違うのである。
貝のような尖ったエンジンから、粒子を出しながら、浮いてる(初登場シーンを見ればわかる)様子は、他のMSとは明らかに違うということを視覚的に訴えている。
この、機体の根本から他のMSと違うということが、ガンダムの特別感を更に増している。
そして、この謎めいた技術が、物語を引っ張る力となっている。
主人公たちの敵は、皆必死にこの謎を解き明かそうとしている。
大勢の組織、人物に注目されているその様子が特別感を更に演出している。
役割としての特別
本作品のガンダムは、どこかの国の兵器ではない。
世界の戦争を終わらせるため、私設武装組織ソレスタル・ビーイングの機動兵器として開発されている。
ガンダムは国も民族も宗教も関係なく、争いがあるところに現れ、武力を壊滅させる。
そういった意味で、ガンダムはただの強い機体ではない。
争いを終わらせる象徴なのである。
このことは、主人公、刹那・F・セイセイの印象的なセリフからも分かる。
「俺がガンダムだ。」
いきなりこれを言い始めたときは、なんてクレイジーな主人公なんだろうと思った。
しかし、主人公の生い立ち、そしてガンダムが背負う使命を考えると、この発言は何も不思議ではない。
少年兵として苛酷な戦場を生き抜き、戦争を恨む刹那にとって、戦争を終わらせるガンダムという存在になること。
かつての自分のように、戦争で歪んでしまった人々をガンダムによって救うこと。
それが、ガンダムになるということなのである。
この一言は散々2chなどでネタにされたセリフだが、作品を通して見ると、まさにガンダムが持つ意味を象徴する素晴らしいセリフだと思う。
そして、このガンダムの「特別な役割」は、作中のキャラ達が繰り広げるドラマ、世界で繰り広げられるSF展開を引き出していく。
未熟なマイスター。対となるエースパイロット達。
本作品の登場人物は、作中の勢力図とは別に、2種類のキャラがいる。
それは、ガンダムに搭乗するガンダムマイスターの4人の青年たち。
これに敵対する各国のエースパイロットをはじめとする大人たちだ。
この2者の大きな違いは、「未熟かどうか」ということだ。
完璧な機体であるガンダムに搭乗する、4人のマイスターは、未熟な存在である。
精神的に未熟な存在だ。
だから、物語の途中で悩み、傷つく。
だが、しっかりと戦いを通じて成長する。
この時に描かれるドラマが素晴らしい。
各々のキャラが抱える悩み、葛藤。
それは、この作品のテーマである、戦争をはじめとする人々の闘いから生じる歪みの結果だ。
それに、キャラが各々戦いの中で自分の考えを見つけ出す。
しかし、それは一人で結論をだすのではなく、各々のキャラが生み出すドラマによって、生まれる結果だ。
個々のキャラの描き方も非常に上手いが、それらの絡みが非常に上手い。
面白いドラマというのは、個々のキャラの個性も大事だが、一番大事なのはそのキャラ同士が互いに影響を与え合うことである。
本作品は未熟なマイスターが戦いを通じて、キャラ同士の掛け合いによって成長していく様子が丁寧に描かれている。
この掛け合いの上手さは、戦闘シーンにも影響を与える。
敵キャラとの因縁の付け方が非常に巧みであり、因縁のキャラ同士が敵対する戦闘シーンは緊迫感が凄まじい。
キャラの感情が交差し、変化していく会話が入れ込まれることで、全く退屈を感じることがない。
マイスターと対をなす大人たち
まだ未熟なマイスター達に対して、成熟した存在として描かれるのが各国のエースパイロット達だ。
彼らには迷いがない。
軍とは、パイロットとは、戦いとは。
そういった戦争アニメで生じがちな迷いは持っていない。
自分の役割を理解し、それを全うしようとしている。
前述した、戦いと共に悩み、傷つきながら迷うガンダムマイスターたちとは正反対の存在である。
それゆえ、彼らにはシンプルにカッコイイと感じることができるし、ストレスを感じることはない。
作品のなかでキャラの成長を描こうとすると、悩みを描く過程でグダったりストレスを感じてしまう時があるが、彼らにはそれがないため、序盤は彼らの動きに注目するだけでストレスフリーに物語を楽しめる。
また、彼らの存在は作品を大きく盛り上げる一つの要素となっている。
それは、ロボアニメで重要な、戦闘シーンの魅力だ。
先述したように、ガンダムという機体は特別だ。
だからこそ、強くなければいけない。
その圧倒的な強さ故に、どうしても戦闘が単調になってしまう。
そこで登場するのがこのエースパイロット達だ。
彼らの機体はガンダムに比べれば旧式であり、性能は大きく劣っている。
しかし、長年の経験と自らの実力で、その性能差を覆す。
このジャイアントキリングが、非常に見ていて面白い。
そして、この実力があるから、オッサンである彼らをカッコイイと思える。
個人的には、ガンダムの中で、一番成長していく若者と、カッコイイオッサンの両者をきちんと描くことができた作品だと思う。
SFとしても優れた作品
サイエンス・フィクション。
こういう技術があったら、の物語としても、本作品は非常に優秀だ。
もしガンダムがあったら。
異次元のレベルの技術を持つ機体が、戦争根絶を掲げたら。
そんな「もしも」に対して、しっかりと作中の政治や軍、民衆がどのように動くかをしっかりと描いている。
また、物語を飽きさせないために、謎を常に作り続け、視聴者を惹きつけている。
一つの謎が解明されそうになると、また新たな謎が生まれ、作中の登場人物がそれを追いかける。
一体この世界はどうなっていくのか。
ミクロのキャラの成長を描いて物語を盛り上げつつ、マクロな世界観もしっかりと描写している。
沙慈・クロスロードという存在
作中には、沙慈・クロスロードという、THE・一般人が登場する。
物語の序盤から、彼の生活が要所要所で描かれる。
彼女とイチャイチャしながら平和な大学生活を日本で送っている。
最初はイライラしかしなかったが、最期まで見ていれば、これが効果的な演出だということが分かる。
つまり、政治や軍とは関係のない、一般人から見た、主人公達ガンダムマイスターとソレスタル・ビーイングの存在を描いているのである。
一般人代表、というわけだ。
そして、彼が徐々にガンダムと関わりを持ち始めるようになっていくことで、ガンダムが世界に影響を与えているのがハッキリと分かるのである。
秀逸な演出
水島精二監督は、非常に演出が上手い監督だと自分は感じている。
今作品もそれは変わらず、素晴らしい演出をみせている。
まずはセリフ回しだ。
「俺がガンダムだ」を始め、名言が毎話登場する。
セリフが面白いから、わずかしか登場しないキャラでも、どういうキャラか分かるし、魅力に感じることができる。
この富野節っぽい、特徴的なセリフは、センスの固まりだ。
乙女座の私としては、グラハム・エーカーのセリフが一番大好きと言わざる得ない(作品見れば分かります笑)。
また、彼の演出力は、物語の終盤に入ると更に影響力を持ち始める。
シリアスなシーン、特にキャラクターの死を、完璧に描く。
艦隊のオペレーターなど、エピソードを描いて感情移入させることができないキャラから、主要人物まで。
全てのキャラの死を、個性を出しながら、完璧に描く。
この演出力は圧巻の一言なので、是非見てほしい。
序盤と一人のキャラが欠点
ここまでべた褒めしたが、欠点も存在する。
まず、最初はガンダムたちの無双が続く。
圧倒的な性能差で量産機をリンチする戦闘シーンが多いため、盛り上がりに若干掛ける。
勿論、戦闘シーン以外では、キャラの成長や世界の動きなどで盛り上がりは存在するが、戦闘シーンを重要視する人には少し退屈かもしれない。
それを食い止めようとエースパイロット達が話に食い込んでくると、それは一瞬で解消されるが。
そして、一番自分が今作品でネックだと感じるのはアレルヤ・ハプティズムの存在だ。
他のキャラが物語で成長していくが、彼だけは成長を感じられない。
戦いの動機もイマイチだし、何よりウジウジと迷ってる姿がストレスだ。
最も、他のキャラが良すぎるがために相対的に悪く見えてるだけかもしれないが…
ガンダム初心者にもオススメの名作
長々としたレビューになったが、キャラ、メカ、SFの3つが非常に優れており、それを支える演出と脚本も完璧だ。
他のガンダムシリーズとの繋がりもなく、ある意味分かりやすいSF設定は、ガンダム初心者にもオススメの作品と言える。
10周年ということで久しぶりに見返したが、改めた素晴らしい作品だと実感できた。
面白すぎて視聴がとめられなかったアニメは久しぶりだ(笑)
是非、ガンダムだからといって敬遠せずに多くの人に見てほしい作品である。
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ビッテンk

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