「物語」の魅力が、ここにある。 「キノの旅 -the Beautiful World-」 レビュー!

   

放送時期 2017年秋アニメ
原作 時雨沢恵一
公式サイト http://www.kinonotabi-anime.com

あらすじ
旅人キノが、喋るバイク、モトラドの「エルメス」と共に、世界を旅していく。

 

評価点数:80点 ★★★★☆

 

「地味」な作品

今作品、地味な作品である。

全12話を通じて、凄まじく盛り上がる話はない。
本作品は1話完結のアニメである。

基本的には、登場キャラはキノという名前の少女と、エルメスという喋るバイク(作中では「モトラド」と言われる)の2人。
この2人が、世界各地を旅しながら、色々な国を巡るのが基本的なストーリーだ。

だから、全12話を通じて、1つの目標があってそれを達成したりする作品ではない。
2人が旅をして、3日間滞在したら今度は別の国に行く。
それをひたすら繰り返す。
滞在した国でも、常に激しいドラマや展開があるわけではない。

 

では、この地味な作品の魅力は何なのだろうか。

自分は、「物語」としての完成度の高さだと思う。
ここでいう「物語」とは、脚本だけの話ではなく、それも含め、キャラ、世界観、演出、それら全てを含め、1話1話が非常に上質な物語になっているからだ。

この「物語」の魅力、というのはどういうものかを、一つ一つ見ていく。

 

物語の主役ではない、主人公

今作品で一番巧みだなと思ったのは、主人公であるキノと、その相棒エルメスの2人のキャラである。

今作品の主人公となり、ほぼ毎話登場するキャラだが、思ったよりもキャラは薄い。
なにか特別なこだわりがあるわけではなく、旅することも、なにかを求めて、というより、旅すること自体が目的だ。

特に主人公であるキノはあまり喋らない。
エルメスのほうがよく軽口を叩くことが多い。

 

では、なぜこのキノが主人公だったのか。
それは、キノが、我々と同じ「旅人」だからだ。

各国に登場する人物は、その国独自の価値観を持っている。
それ故に、我々が感情移入することが難しい。
そんな人々を、キノは「旅人」として、我々と同じような価値観、距離感で観察する。
だからこそ、この作品においては、キノが主人公になる。

今作品の「物語としての主人公」は、キノではない。
物語の主役は、その国に登場する人々である。
ただ、彼らだけでは、我々は作品に馴染めない。
価値観が違うからだ。
しかも、毎話価値観が違うからなおさらついていけない。

そんな我々に、物語を届けてくれるのが主人公であるキノである。
主人公の役割は彼らを我々に届けるための潤滑油でしかない。
キノは語り部であり、国を回って旅をしていく中で、その国の人々の生き方を「観察するのみ」である。

 

そう、この作品がすごいのは、どんな国でも、その国の人に主人公が基本的に干渉しないことである。
人の生き方を否定しない。
だからこそ、この主人公とその相棒を魅力に思うのだろう。

どんな生き方をしようと、それは自分たちには関係ない。
この余裕が非常にカッコいいのだ。

冷酷に見えるかもしれない。
実際、主人公たちが冷酷に見える場面もある。

しかし、本当に冷酷な人間ではない。
エルメスとの会話や、他の人との会話から、少しだけ人間味を見せる。
あまりにも酷い現状を見て、何とかしようと思うこともある。
しっかりと人間らしさを見せることで、感情移入もさせる。

そんな彼女のキャラの描き方は、完璧に近い。
あくまで、傍観者として存在しながら、しっかりとキャラを立たせている。
その傍観者としての単調さをサポートするかのように、主人公の相棒のエルメスは、軽口をいい、場を和ませる。

この2人のキャラの良さは、地味な今作品を大いに盛り上げる要素になっているのだ。

 

世界がガラっと変わる楽しみ

主人公のキノが旅して各国を回る。
この世界の国は現代の国とは少し違って、周りを城壁で囲まれており、基本的には自給自足の生活をしていて他の国と交流がない。
そして、この作品で出てくる国は非常にそれぞれ個性がある。

嘘つきの国。
人殺しをしていい国。
移動する国。

一体、どんな国なんだ?と思うような国がたくさんだ。
一見してどんな国かわかる国もあれば、3日経ってようやく分かる国もある。
そして、どんな国も1話でそこを去り、また別の国の話になっていく。

 

これのどこか魅力的かといえば、2つ魅力があると思う。

1つは、1話ごとに異なる世界観を楽しめるということだ。
SF感のある国もあれば、中世西洋風の国もある。
優しい人ばかりの国もあれば、殺伐としている国もある。
だからこそ、1つの作品なのに、いくつもの世界に会える。

中々他のアニメではできない体験である。
しかし、世界観や作品の雰囲気がブレることはない。
後述するが、それがこの作品の凄いところである。

 

もう1つが、異なるテーマを設定できる点だ。

人間の醜いところを描いた話の次には、素晴らしいところを描く。
こんな感じで、各話、というより各国ごとに描かれるテーマが自由に決められる。

勿論、毎話毎話重たい話ばかりではない。
箸休めのような話もあるし、作中での物語から受けるショックは少ない。
キノという主人公が、語り部として我々の間に入ってくるからなのだろう。

だから、毎話異なる世界観、異なるテーマを、ストレスを感じることなく、楽しむ事ができる。

 

作品全体のブレなさ

今作品は、先述した通り、これと言ったメインテーマはない。

本当に旅をするだけの話である。
ただ、作品全体として一本のしっかりとした軸がある。

それは、キャラのブレなさが大きい。

一応、今作品には主人公以外にもう1人旅人が登場する。
そのキャラも、しっかりとキャラが立っている。
先述した通り主人公とその相棒も然り。
看板となるキャラがブレないから軸もぶれない。

 

そしてこのブレてないキャラが、1つ1つの物語を丁寧に視聴者に伝える。
この構図が変わらないから、作品としてのブレがないのである。
そして、この物語の中にもしっかりと軸がある。

それは、「人間」を描いている、ということだ。
多種多様な国があるが、その特徴を作り出している原因はそこに住んでいる「人々」だ。

〇〇な国、というサブタイトルが多いが、正確には〇〇な人々、である。
我々からしたら奇妙な価値観を持ち、その中でどのように生きていくか。
そんな人々の動きこそが、物語の軸となっている。

そして、この物語がたくさん集まって、「キノの旅」という一つの作品ができている。
だからこそ、作品の軸がブレないのである。

 

地味だが、間違いなく良作

褒めに褒めちぎっているが、やっぱりこの作品は地味である。

そして、独特な世界観を持っている。
口数の少ないキノが、つぶやく何気ない一言だったり、国の人々の言葉だったり。
素敵なセリフがたくさんあり、それが世界観を作っている。
というより、この少ないセリフによってのみ世界観が作られていると言ってもいいくらい、セリフが構成している雰囲気が強い。

さすが、純文学の香りが残る時代のラノベ作品といったところか。

 

そして何より、不親切な作品でもある。

なんせ、いきなりバイクが喋る(笑)
しかも喋るアニメーションがないから、初見は戸惑うだろう。
バイクが喋ることに関しては最後まで説明がない。

 

先述したセリフの少なさも相まって、分かりやすい作品ではないかもしれない。

しかし、物語の中身自体は、非常にシンプルだ。
そのシンプルな物語を、数少ないセリフとキャラで、しっかりと魅力をつけて伝える。

作品としては、素晴らしい完成度である。
1話をとりあえず見てほしい。
そこでこの作品の雰囲気が好きになれれば、最後まで楽しめるはずだ。

 

こういった雰囲気の作品は最近なく、また他にはない独自の魅力を持っていたため、自分は大いに楽しめた。
昨今のラノベ作品に飽き飽きしている人は、ここで古典ラノベ作品の良さに浸ってみてはどうだろうか。

 


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ビッテンk

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熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

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