前作の良さをそのままに、進化した落語アニメの完成形 「昭和元禄落語心中 ー助六再び篇ー」 レビュー

   

放送時期 2017年冬アニメ
原作 雲田はるこ
公式サイト http://rakugo-shinju-anime.jp/

あらすじ
ついに「助六」の名をつくごとになった与太郎。
子供ができた姉さんや、相変わらず落語に絶望している師匠の八雲のために、落語の腕を磨くのであった。

評価点数:78点 ★★★☆☆

 

前作の欠点を克服した作品

今作品は『昭和元禄落語心中』という、2016年冬アニメに放送されたアニメの続編である。
それを見ないと今作品はチンプンカンプンなのでまず見てください。

そちらのレビューはこちらから。

 

前作は「助六」と「八雲」の二人の落語家に焦点を当てた物語。
声優の素晴らしい演技、それを活かすいぶし銀な作画・演出、などなど素晴らしい点が多くあった。

しかし、それを殺してしまったのが、林原めぐみ演じるヒロイン、「みよ吉」のキャラ作りの雑さ。
彼女が原因によって引き起こされる、話の暗さ。

ただでさえ地味な作品なのに、この暗さのせいでますます作品の魅力が下がってしまった。

しかし、今作品はこれらの欠点を完璧にカバーした作品となっている。

 

前作とは打って違って明るくアホな主人公の登場、それを支える明るくて可愛いヒロイン。
そして変わらず素晴らしい声優の演技と落語シーン。

前作より格段にパワーアップした作品となった。

 

”与太郎”と”小夏”の名カップル

今作品の一番の魅力は、与太郎と小夏の主人公、ヒロインの二人の魅力である。

これは前作品にはなかった、大きな魅力である。

 

主人公の与太郎は、落語を愛する大バカモノだ。
その落語バカっぷりは、見ていて本当に気持ちいい。

前作の助六も、同じようなキャラであり、明るさはあった。
しかし、みよ吉に惚れてしまい、そこから一気に話が暗くなる。
恋人のために落語を捨てたことで、彼自身のキャラの魅力が大きく下がってしまった。(後半は持ち直したが)

 

一方で、今回の主人公は落語に対しても、恋愛に対しても真摯で、分かりやすいし、明るい。

助六と違い、落語を楽しんで”やる”ことしか頭にない。
師匠のように落語界の行く末なんか気にしていない。
自分が大好きな落語を、最高の形で”やる”。
そのために生きる。
シンプルだが、非常にわかりやすくて応援できる主人公となっている。

ただ、落語マシーンのような人間かと思えば、そうではない。
アホなところや、人間らしくヒロインに恋しそれに振り回される姿にも、非常に共感を得る。
前作と違い、落語に対する姿勢でも、私生活の部分でも、視聴者が共感しやすいキャラになっている。

 

更に、前作と今作の一番大きな差が、ヒロインの魅力だろう。

前作のヒロインは本当に助六を悪堕ちさせるために出しました、というのが丸わかりなキャラで、声以外、魅力を感じるのが難しいキャラだった。

しかし、今回のヒロインは違う。
「姉(あね)さん」と主人公から言われる、男勝りなキャラではあるが、その分デレたときの破壊力は抜群だ。

 

また、彼女自身のエピソードも丁寧に描かれており、非常に感情移入しやすい。

両親を不幸にした落語に対して複雑な感情を持ちながらも、それに向き合って生きようとしている。
そして、育て親である八雲に対しての、愛憎入り交じった複雑な感情。

一歩間違えれば、メンヘキャラになりそうなところを、巧みな心理描写と、豪快な性格のキャラ付けで、見事にそれを回避し、可愛さによる癒やしと、重厚なテーマによる緊張感の両者を作品に与える素晴らしいキャラ付けとなっている。

 

そして、この魅力的な二人が、物語の中でかけ合わさることで、さらなる魅力を生み出す。

夫婦漫才のようなやり取りは、微笑ましく、シリアスなムードになりがちな作品に癒やしを与える。
また、コメディな部分ばかりが強調される主人公の、男としてのカッコよさも、ヒロインとのやり取りで生まれてくる。

ヤクザを前に、ヒロインのために啖呵(落語家の啖呵)を切る姿は、男が惚れる男だ。

この二人の存在こそ、この作品の動力であり、地味さを吹き飛ばす、素晴らしい燃料であった。

 

八雲というキャラが描き出す重厚なテーマ

この燃料によって飛ばされるものが、今作品の根幹にあるテーマである。
その一つが、「落語とはなにか」というテーマだ。

このテーマに、主人公である与太郎はある意味真摯に向き合ってないとも言える。
彼はただ落語が好きで、自分が落語をどう思うか、どう演じるか、どう楽しませるのかということしか考えておらず、落語界の行く末を憂いて行動したりはしていない。

 

これと真逆の存在となっているのが、前作からのキャラであり、もうひとりの主人公とも言える、前作の「菊比古」こと「八雲」である。

彼は常に落語を重く考え、その落語に対して自分なりの考えを持っていた。
その行き着く先は、退廃的なものであったが、だからこそ、彼の落語は他の落語にはない独特のモノとなっていた。

ある意味、軽くなってしまった作品に、「重さ」を与えていた作品とも言える。

 

彼自身が陰気臭さに比例するかのように、彼が登場すると少し、作品の雰囲気が暗くなる。
それは悪い意味ではなく、物語をギュッと引き締める、いい存在感を作品に与えている。

それは、前作に描かれた壮絶な人生経験がゆえでもあるし、その経験の中で中心にあった落語に対して彼が感じている「重さ」でもある。
彼の登場は、この作品全体にいい意味で「重さ」を与えているのである。
それは、「落語」というテーマに関してのみではない。

 

複数のテーマを見事に描き出す

今作品のテーマは、落語という一つのことに関して描いたものではない。
落語から「芸術」という拡がりを見せる。
そういったマクロな拡がりもあれば、「血縁」や「親子」、「才能」といったミクロな視点でのテーマもある。

これらのテーマを同時に見事に描き出しているのが今作品の特徴だ。

そして、こうしたテーマの中心にいるのが、「落語」であり、その側には「八雲」がいる。
こうした一貫性を持ち、最後まできれいに物語を終わらせたのは、非常に高評価であった。

 

前作と変わらずの素晴らしい声優の演技、それを際立たせる作画、安定感のある脚本(心なしか前作よりも引きが上手くなっている気がする)。
そこに、主人公とヒロインの魅力を加わり、よりパワーアップした、良い作品ではあった。

しかし、相変わらず地味だ(笑)。
間違いなく話題作にはならない地味さだろう。

しかし、見終わった後に残る清々しさ、重厚なテーマから感じれる奥深さはなかなかのものである。
ぜひとも一見していただきたい。

 

与太話

テーマの中心にいるのは「八雲」だと私は書いた。
なのに、レビューでは主人公は「与太郎」と書いている。
これに関しての”与太話”である。

 

前作も含めて、『昭和元禄落語心中』という作品を通してだと、間違いなく主人公は「八雲」であり、彼の人生こそが作品の骨格である。
しかし、”今作品”の主人公は「与太郎」だと私は思う。
これには最後まで悩んだ。
ダブル主人公が一番正解なのだが。

両者とも”成長”という観点では、主人公としての要素を満たしている。
そしてどちらも物語の中心にいる。
しかし、今作品において、常に物語を動かしていたのは与太郎だ。
そこが、一番主人公たらしめる要素だと自分は考えている。

ただ巻き込まれて話題の中心にいるだけではなく、自分で物語を動かせる強さこそ、主人公の必須条件ではないだろうか。

以上、与太話でした。

 

 


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ビッテンk

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熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

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