たつきの「好き」の素晴らしさ 「ケムリクサ」 レビュー!

      2019/06/27

放送時期 2019年冬アニメ
原作 なし
公式サイト http://kemurikusa.com/

あらすじ
荒廃した世界で暮らす3人の少女。
そこに、記憶をなくした1人の少年が現れる。
この世界は、彼は、少女たちは、一体何者なのだろうか。

 

評価点数:88点 ★★★★☆ 

 

「好き」の大切さ

今作品は、昨年度話題になった『けものフレンズ』の監督、たつきの完全オリジナル作品である。

今作品の大事なキーワードに、「好き」という言葉がある。

今作品の登場人物はみんな「好き」を持っている。
食事だったり、ケムリクサだったり、「みどりちゃん」という植物だったり、戦闘だったり…
しかし、ヒロインであるりんだけは、それがなかった。
その「好き」を探すというのが、今作品の大きな流れでもあるのだが…

 

そういった作品の中の流れだけでなく、メタ的な視点も加えて感じたことが、「好き」なことをやりきる大切さである。

今作品は、原作もない、完全オリジナルである。
だから、『けものフレンズ』では、少ししか見えてなかった、たつき監督の「好き」が全面に出ている。

人気作品の続編をクビになり、普通なら自暴自棄になってもおかしくない中、変わらぬ自分の「好き」を持ちつづけ、それを形にしてきた。
その集大成が今作品である。
そしてそれが、非常に魅力的な作品になっており、多くの人から支持される。

このことは、自分の「好き」を持ち、それを実行し続けている人たちにとって、大きな励みになるだろう。
また、「好き」を見つけられていない人にとっては、「好き」を見つけるきっかけにもなる。
自分も、今作品を見て、非常に励まされた。
非常に素晴らしい作品であると思う。

では、たつき監督が「好き」なことをやっている今作品がどう魅力的なのか、それを今からレビューするのが私の「好き」なことである。

 

ハードSFな世界観

今作品では、『けものフレンズ』でチラ見せされていた、SFな世界観が初っ端から全開だ。

人がほとんどいない世界、荒廃した建物、襲ってくる謎の生物。
こうしたハードSFな世界が描かれる。
画面も全体的に暗い。

 

謎が多い設定に加え、序盤からハイペースで飛ばしてくるので、かなり戸惑う視聴者もいるかもしれない。

ただ、たつき監督の素晴らしいところは、しっかりと視聴者が楽しめるような作品にしていることだ。
こうした作品では、作者の「設定を見せつけたい欲」が暴走し、設定を見せるエピソードやシーンが中心になってしまい、その世界観に魅力を感じない視聴者は楽しめなくなることが多い。

しかし、今作品はそうではない。
視聴者が物語に入りやすいように、様々な工夫が凝らされている。

まず、主人公の設定だ。
主人公であるわかばは、記憶喪失になっている。
つまり、作品世界についての知識がなく、我々と同じ状況だ。
同じ目線でリアクションや質問をしてくれるので、スッと作品に入り込める。

 

更に、今作品も、『けものフレンズ』と同様、「旅」をする物語だ。

一箇所にとどまるのではなく、新たな新天地を目指して、仲間たちと冒険する。
そうしていろんな場所を巡る内に、少しずつ世界のことがわかってくる。
視聴者も、見ていく内に、冒険の結果明かされる世界の謎にワクワクしてくる。
「未知の部分」が、イライラではなく、「楽しみ」へと変わっていくのだ。

SF作品と相性の良い物語へとうまく構成している。

 

ただ、こうした小手先だけのテクニックを駆使しているだけでは、良い作品にはならない。
作品の面白さとは何か、というのを、たつき監督はしっかりと理解している。

そう、物語とは、しっかりとキャラたちが絡み合うことで面白さが生まれるのである。

 

ボーイ・ミーツ・ガール

本作品のイメージとしては、ハードSFと戦闘アニメという印象が強いが、物語の主軸は、主人公であるわかばとヒロインのりんの、2人のボーイ・ミーツ・ガールである。
本作品の焦点の大部分は、ここに当てられているし、魅力の大半はここだと思った。

 

まず、2人の関係の描写が非常に丁寧だ。

記憶喪失で、一見頼りない主人公に、ヒロインであるりんがなぜ惚れるのか。
これが非常にわかりやすい。

まず、ヒロインであるりんはどのような少女なのか。
そこをしっかりと描く。
かつては、好奇心旺盛で、冒険が大好きな少女であった。
しかし、他のキャラから、家族を守るために、その好奇心を捨てる。
「好き」を捨ててしまう。

 

そこに登場するのが、主人公である。
かつては持っていたが、家族を守るために捨てざる得なかった好奇心。
それを持ちながらも、家族を助ける主人公のわかば。
イマイチ頼りがいはないが、自分ができなかったことを実行し、妹や姉といった家族を大切に守る主人公に、少しずつ惹かれていく。

 

なんて王道なボーイ・ミーツ・ガールなのだろうか。

突如現れた少年が、自分のトラウマやコンプレックスをえぐっていく(無意識に)。
最初はそれに反発をするが、彼の行動によって、少しずつ少女のコンプレックスは解決され、世界が広がっていく。
今作品で言えば、わかばの好奇心と行動によって、家族を危険にさらしてまでも、冒険に出かけようという決断をりんは下す。
これは、彼女の一種のトラウマによって封じられていた世界が広がるということだ。

今作品の魅力の大部分は、この2人のドラマであり、SF設定などは、それを盛り上げる舞台装置にしか過ぎないと自分は思う。

 

何より、恋する少女は何よりも魅力的だ、ということを、たつき監督はわかっていた。

りんちゃんがめちゃくちゃかわいいのです。
家族を守るために頑張る健気な姿。
わかばに赤面しながら顔を背ける古典的だがそれゆえに魅力的なツンデレ。

もう本当に、ここ最近の作品の中で一番の当たりヒロインであった。
視聴中のニヤニヤが止まりません。

 

素晴らしい王道。しかし、爆発力はない。

王道SF作品と、今作品は位置づけできるだろう。

前作『けものフレンズ』同様、物語とはかくあるべし、という王道展開を見事に描ききった。
それを支えるキャラたちのドラマも素晴らしかったし、演出も見事である。
「熱い展開」のお手本をしっかりと見せてくれた。

 

ただ、『けものフレンズ』のような爆発力は今作品にはない。

かの作品には、序盤の糞アニメ臭からの後半の神展開、そこからの爆発力が凄まじかった。
それには、シリアスをうまくチョイ見せして視聴者を引きつけつつ、最後に一気に雰囲気を変えることができたのが大きい。
また、ジャパリパークのキャラたちが繰り出すギャグとも日常とも言えない独特な雰囲気が、非常に良いスパイスになっていた(序盤はそのスパイスが強すぎたが)。

しかし、今作品は最初から最後まで、シリアスなSF世界である。
もちろんずっとシリアスなわけでもなく、和やかなムードのときもあるが、常に死の危険がある世界なのは間違いない。
しかも、SF世界設定も、特別斬新な設定というわけでもない。
そういった意味で、意外性は少ない。

また、SFアニメ(バトルアニメ)というふうに、言い表せるジャンルの作品であることも事実だ。
演出力(11話のEDの入りなど鳥肌もの)や構成力など、高いクオリティを放つ作品ではあるが、それはあくまでSFアニメとしての枠組みである。

こうした既存の枠組みを超えた作品であった、『けものフレンズ』の爆発力には及ばなかったのが、正直な感想である。

 

ただ、これは悲観する事実ではない。
『けものフレンズ』のような事例は、あくまで奇跡の産物である。
特殊な環境であったからこそ、あそこまでの作品になったのだ。
しかし、今作品は完全なオリジナルであることに加え、SFという一般的なカテゴリの中で、ここまでのクオリティを作れたことは、たつき監督の実力の高さの証拠である。

今後の、SFに限らず様々なジャンルの彼の作品を見てみたい。
そう思わせる作品であった。

 

SF作品としてまとまっている分、『けものフレンズ』よりも、見やすい作品だ。
人にオススメするなら、自分は『ケムリクサ』の方をオススメする。


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ビッテンk

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熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

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