「母性」から描く、新たな不二子の魅力 「LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘」 レビュー

      2019/07/25

 

公開時期 2019年5月31日
原作 モンキー・パンチ
公式サイト http://fujiko-mine.com/

あらすじ
悪徳企業から金を横領し、大金を得ていた会計士の息子。
彼の心に入り込み、大金を奪おうとする峰不二子だったが、そこにビンカムという恐ろしい殺し屋が忍び寄る。

 

評価点数:93点 ★★★★★

 

「母性」から描く、新たな峰不二子

今作品は、「LUPIN THE IIIRD 」シリーズの3作目。『次元大介の墓標』、『血煙の石川五ェ門」の続編にあたる。(リンクをクリックしてもらえばそれぞれの作品のレビューに飛びます)

このシリーズの特徴としては、他のルパン作品にはない圧倒的な「ハードボイルドさ」にある。
TV版では絶対に描けない、男のハードボイルドな世界。
それこそがこのシリーズの魅力であった。

そこに、どう女性である峰不二子を描くか。
不二子の分かりやすい魅力は、やはり「エロス」だろう。

 

これは、今までのルパン作品でも描かれてきた共通の魅力だ。
「LUPIN THE IIIRD 」シリーズにおいても、「エロス」を基本に描かれてきたのは間違いない。

ただ、少年誌的な分かりやすいエロよりも、「大人の魅力」という、このシリーズにあった方法で描写してきた。
今までのルパン作品みたいにルパンに媚びた声を上げることなく、自立した女として、色気をしっかりと描いていた。

不二子のピンチ時におけるサービスシーンなんかも、ハードボイルド作品にありがちな、マニアックな描写で描かれ、なんとも言えないエロスがあった。
今作品も、こうした「エロス」を全面に押し出して、不二子を描くのかと思っていたし、そうするのが、普通だろう。

 

しかし、今作品は違う。

今回の不二子は、1人の女性としてでなく、「母親」として描かれている。
「母性」を、不二子の魅力として押し出してきたのだ。

今作品の不二子は、親が隠した莫大な裏金を得るため、両親を亡くした少年とともに行動する。
そこで、母親のように、少年の心に取り入り、裏金の隠し場所を手に入れるのが目的だ。

今まで何人もの男を色仕掛けで攻略してきた不二子だったが、小さな子どもには色仕掛けは通用しない。
「母性」を出して、少年の母親のように接し、彼の心を開こうとするが、父親を暗殺者に殺された少年は、復讐に取り憑かれ、不二子に心を開こうとしない。
今までの男と違い、自分の思い通りにならない少年にイライラしながらも、彼の「母親」になれるように悪戦苦闘する。
時には危険を顧みず、少年のために行動する。

 

あくまで、こうした不二子のだす「母性」は、「お金のため」の演技だ。
そこは、完全なる「嘘」である。
偽りの「母性」。
偽りであるとはいえ、不二子という女性をこの観点から描いた作品は存在していなかった。

まず、この新たな切り口から描かれる峰不二子というキャラを見るだけで、非常に楽しい。

そして、この「嘘」の「母性」がどうなっていくのか。
これがこの作品の最大の焦点であり、もっとも重要なところとして視聴者は期待する。

この期待に対して、見事な、良い意味での、「裏切り」を我々に与えてくれた。

 

「ハードボイルド」な峰不二子

ここからはラストシーンのネタバレが存在する。
まだ見てない人は、黙ってブラウザバックしてほしい。
最高のラストなので、ぜひ初見で見てほしいのだ。

 

 

 

 

では、その結末とは何なのか。

今作品が描き出した峰不二子の「嘘」の「母性」に対する結論。
これは、まさしくこのシリーズの特徴である、「ハードボイルド」さを重視した、素晴らしい結末だった。

普通の物語なら、こうした流れだと、最後には、「母性」に目覚めて終わる。
最後は、少年への「母性」から、彼の幸せを思って、立ち去るというのが、普通の結末だ。
当然、狙っていたお金は盗まない。
イイハナシダナーで、終わる。

 

今作品はそうはならない。
それは、彼女が峰不二子だからだ。

峰不二子は、ただの優しい女ではない。
男を騙し、金を盗む。
それこそが峰不二子であり、彼女の存在意義だ。
だから、ここで少年に母性を抱いてお金を盗まなかったから、それは峰不二子ではない。

それをこの作品はわかっている。
だから、彼女は「嘘」を突き通す。
少年とその父親を騙し、お金を盗む。
そして、少年のもとから黙って立ち去る。

 

これこそが、「ハードボイルド」といえる。

いい人、いい物語では終わらない。
自分の理想、生き方に対して決して妥協しない。
だから、時にはアウトローになる。

アウトローだから、タバコを吸っているから。
そんな雰囲気のハードボイルドではなく、本当の「ハードボイルド」がここにある。

 

全年齢版の、家庭向けのルパンだったら、最後は少年と仲良くするし、お金は取らずに返して終わりだろう。

TV放映しないこのシリーズだからこそ、描ける外道とも捉えるかもしれない不二子の選択。
それこそが、この作品の最大の魅力である。
しかし、この作品はただハードボイルドでは終わらない。
その最大の魅力をわかっている。

 

絶妙な不二子の心理描写

こんな選択をした不二子は、人間味のない、ただの金好き悪女なのだろうか。
決してそんなことはない。

長い間少年と共に過ごす内に、母性が一切芽生えなかったわけがない。
それを裏切ることに、葛藤が生じないはずがない。
しかし、自分が「峰不二子」という女であるためには必要なことだ。

そこに生じる葛藤は、ほとんど描写されない。
彼女は迷わずに決断する。

 

この決断に対する彼女の心情。
それが垣間見えるのが、最後のルパンとのシーンなのだ。
製作者はこの数十秒の僅かなシーンに、彼女の心情描写をすべて詰め込んでいる。

 

他人を騙し、利用することはあっても、信頼して頼ることはしなかった。
頼れるのはお金だけ。
孤高の女、それこそが、峰不二子であった。

そんな彼女が、気だるげな表情で、ルパンの背中にもたれかかる。
「眠ってもいい…?」
この何気ないセリフと表情、演技。

ここに、峰不二子を「母性」というテーマで描くことの結末を描いている。

そして、スタッフロールあとの、本当に最後のシーン。
ここで、峰不二子というキャラのブレない部分を描いている。

彼女は傷つき、男にすがるようなキャラではない。

最後は、自分で立ち上がり、男から去っていく。
そんな彼女の力強さと、それを狙うルパンのカッコよさ、どっちも描いた素晴らしいシーンであった。

 

「シリーズ」としての面白さ

今作品は、ようやく「LUPIN THE IIIRD 」シリーズとしての面白さがしっかりと出てきた作品だと思う。

今までの作品は確かに面白かったが、それは単体の作品としての面白さであった。

しかし、今作品では1作目を見てればニヤニヤが止まらないルパンと次元の掛け合いのシーン。
今までの殺し屋が出てくるワクワクシーン。
そして巨大な敵の影。

シリーズを通して楽しんで見ていた人ならば、ワクワクしないわけがないシーンが多かった。

また、シリーズの面白さではないこの作品自体の面白さもしっかりと存在している。

峰不二子というキャラを新たな視点で描くという目的は前述したようにしっかりと達成した上で、物語を盛り上げる様々な要素が今作はしっかりと面白い。

ビンカムという新たな敵キャラの不気味さ、強さはよく表現できていたし、彼との戦闘シーンは非常に緊迫感のあるものになっていた。
物語のトリックや落とし所もかなり上手く、見終わったあとの納得感は非常にたかい。

こうした様々な要素を含めて、1つの作品としても、シリーズの続編としても、非常に完成度が高い作品だった。

 

次回作品に非常に期待

見るたびに進化していると思えるこのシリーズの作品。

本当に次回作品が楽しみだ。
おそらく、次回は銭形警部に焦点が当たるだろう。
普段はコメディアンな脇役である彼がどのように「ハードボイルド」作品として描かれるのか。

そして、敵の正体(まぁ1作品目のラストで出ていたアイツだと思うが…)は誰なのか。
五エ門とルパン一味の合流はどのような合流をし、どんな活躍をするのか。

そういった諸々な期待を込めて、次回作を非常に楽しみにしている。

 

楽しみすぎて、ブルーレイ買っちゃいました(^O^)


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ビッテンk

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熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

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