誰も知らない隠れた良作。アニメ版「銀盤カレイドスコープ」レビュー!

      2016/11/27

銀盤カレイドスコープ 6 [DVD]

放送時期 2005年10月~12月(全12話)
原作 集英社スーパーダッシュ文庫「銀盤カレイドスコープ」
海原零
公式HP http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/ginban/

期待の若手フィギュアスケーターとして活躍する桜野タズサは、スケーターとしての能力の高さだけでなく、毒舌と高飛車ぶりから「氷上の悪夢」と恐れられる女子高校生。
そんな彼女に何故かカナダ人の少年の幽霊が取り憑いてしまった。
100日間成仏できないと言われる幽霊と一緒に、タズサはトリノ五輪出場を目指すことになるが……。

評価得点:★★★★☆ 80点(良作)

※ ネタバレ有につき、ご注意の上お読み下さい。

 

「フィギュアスケート」と「冬季五輪」が舞台の異色の傑作

幽霊に憑依された女子アスリートが、オリンピックを目指す「スポーツもの」で、中々珍しいストーリーだと言える。

スポーツものなわけだが、いわゆる「スポ根」的な感じは薄く、主人公であるタズサと、彼女にとりついた幽霊であるピートの関係性と、それに伴ったタズサのアスリートとしての進歩に焦点が当てられている。

ライトノベル原作なのだが、この時代(2003年。第二回スーパーダッシュ新人賞受賞作だ!)のライトノベルにテンプレ臭だのお約束だのといった、昨今のラノベ臭は全くない。
革新性と野心性に満ちた新しい物語の高揚感が漲っている。

 

桜野タズサというアスリートの魅力

話の内容は原作を一部改編しながらも、基本的には小説版1、2巻の内容に沿ったものだ。
「演技中に笑わないタズサ」といった細かな要素が廃止され、より単純なストーリー構造に修正されているが、別に改悪というわけでもなく、綺麗に整理したといった形だ。

 

主人公のタズサの性格は、いわゆるリナ・インバース的な「天上天下唯我独尊ヒロイン」である。
この極端なまでの「私こそがルール」的なぶっ飛ばしヒロインというのは、実は意外に見ない。
強気な個性を備えたキャラクターは多々いるが、「世界は自分のためにある」と定義できるキャラクターは中々に稀有である。

恐らくその理由は、そんな性格のヒロインは「単なるキチガイ」でしかないからだ。
世界を自分中心で考えるのは、理性が破綻した異常者か、そうでなければよほど自己中心的で自己溺愛なキャラクターでしかない。
だからこそ、こういった強烈なヒロインを描くのには、きちんとしたバックを用意してあげなければならない。

 

タズサの場合は、アスリートとしての強烈なメンタルや向上心にあふれる人間性がその土壌にある。

彼女の凄みは、「世界を敵に回しても結果を出すのが自分」という強い自我だ。
そこには世論を嫌い、風評を嫌い、個としての存在のみを評価したいという彼女の強い想いが存在する。
畢竟、そのキャラクター性は強烈なカリスマとなり、凡百のヒロインの及ぶところではなくなる。

また一方で、そういった風評に押しつぶされそうになる少女としての弱いメンタルもまた、魅力の一つ。
世界を敵に回す辛さを感じながら、その事実に震えるタズサもまた、高校生の桜野タズサなのだ。
素直にとても可愛らしい。

 

安定したシナリオでつむがれる独自の青春群像

そんな彼女とピートという幽霊との関係が、本作の主筋だ。

 

憑依したピートをどうにか追い出そうと様々な創意工夫をこらす序盤。

ともに五輪を目指し、スケートの完成度を高めていく中盤。

やがて来る別れを意識しながら、強い絆を結んでいく終盤。

 

あるときはコミカルで、あるときは熱血。そしてまたあるときは、とても切なくて。

 

一つの競技を通した心の交流であることは疑いないが、スポ根ともラブストーリーとも言いがたい、独自の青春群像だ。

 

最大の欠点は作画、特にスケートシーンは……

とにかくこの作品、放送当時の評価は決して芳しいものではなかった。
その最大の理由が作画崩壊で、当時は結構有名だったようだ。

私はDVD版しか見ていないので放送内容を知らないが、DVD版の作画は別に崩壊しているわけではない。
日常シーンの描写は綺麗で丁寧だし、物足りなさは感じない。

 

……が、スケートシーンは別だ。

迫力を演出する創意工夫はなく、作画そのものも極めて凡庸。
動作を極力抑えて予算をケチりました臭がぷんぷん出ている。

それほど期待値が大きかったアニメではないため、ダイナミックなスケートシーンを描くのは予算的にムリだったのはわからなくもないが……原作ファンとしては、非常に残念である。

 

一方で、スケートシーンはこのアニメの本筋ではない。

いや、本筋には違いないのだが、このアニメではタズサとピートの関係を主軸に据えて、2人の心の交流を描くことに腐心している。
そう考えれば、ダイナミックなスケートシーンを描くことよりも、日常の描写を安定させることを選ぶのは、まあ納得できなくもない。

 

…………と、弁護してみたけど、やっぱりツライなぁ(笑)

 

やはり原作を読んでいた人間からすると、残念には違いない。
本作の評価が人によって大きく分かれるのは、「どれだけ作画を気にするか」というその一点が関連するのは疑いアリマセン。

 

知名度の低さが惜しまれるアニメ&原作

作画という難点はあるものの、全体として完成度が高く、出来の良いアニメだといえる。

作画崩壊で悪い方向での風評が立ってしまったものの、原作「銀盤カレイドスコープ」はもともと集英社スーパーダッシュ文庫が誇った傑作中の傑作だ。
それに忠実に(一部変更はあるとしても)描かれたこのアニメが、駄作のはずがない。

とにかく知名度のとても低い作品ではあるのだが、是非一度見てみて欲しい。

そしてハマった人は、原作も読んで欲しい。
アニメで語られることがなかった、女帝リア・ガーネットを含む世界の強豪たちとの凌ぎあいは、必見だ。


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セトシン

セトシン

子育て中三十路副業ブロガー。「天地無用!」の砂沙美ちゃんに魅了され、アニメの世界にどっぷり浸る。 アニメはとにかくシナリオ重視。芯のあるアニメが大好き。泣きたいけど泣かせにかかる要素は大嫌い。とにかくハッピーエンドで泣かせて欲しい人。

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