アニメ版「うたわれるもの」レビュー。貴重な優良大河ロマンアニメ!

      2016/09/01

うたわれるもの Blu-ray Disc BOX

放送時期 2006年4月~9月(全26話)
原作 Leaf PCゲーム「うたわれるもの」
公式HP http://www.imagicatv.jp/content/utaware/

青年は気が付くと、獣の耳と尻尾を持った不思議な少女に介抱されていた。
記憶を失った青年に、少女~エルルゥ~は手厚い看護を施す。
傷が癒えた青年は少女の亡き父である「ハクオロ」の名前をもらい、その田舎の集落で獣のような耳と尻尾を持った人々と暮らしていくが……。

評価得点:★★★☆☆ 78点(佳作)

※ ネタバレ有につき、ご注意の上お読み下さい。

 

大河ロマンをやり切り、将を描きぬいた稀有な作品!

原作はPCの年齢制限有ゲーム。
Windows98対応というのが時代を感じさせるわけですが、アニメはそのリリースから5年以上の歳月を経て公開されている。

 

希少性の高い戦国絵巻

本作のとにかく素晴らしい点は、大河ロマンをやり抜いたという一点だ。

終盤ややファンタジー要素が強くなってしまうが、途中までは完全に「国家の興亡と英雄の姿を描いた大河ロマン」そのものの姿があった。
多くの作品が大河ロマンを描こうとして挫折していく中で、本作が最後まで安定した質を持ってそれをやり切ったことは、何より評価されるべきことだろう。

英雄である主人公「ハクオロ」が周囲の人々とのかかわりを大切にしながら、みんなを守るための闘いを繰り広げていく。
特に目立った欠点は思い浮かばない、良作である。

 

ハクオロという智将を、破綻なく描いた功績

そもそも大河ロマンを志した多くの作品が次々と自滅するのは、肝となる

「知略戦」

の要素が描けないことにある。
敵を欺き、視聴者をあっといわせる軍略こそ、大河ロマンの最大の見せ場だ。

 

・・・・・・見せ場なのだが、これが難しい。

 

圧倒的な武勇を誇った豪傑ならいくらでも書ける。
艶やかな色気をもった美人ならいくらでも描ける。

だが、知略を持った英傑の軍師はそれほどたやすくはない。
普通に「面白い物語を描く技術」とは赴きを異にする、独自の魅せ技が必要となる。
軍略・兵法・心理学……歴史における勝者と敗者の要因を、きちんと把握していなければ、大河ロマンなど描けるわけがないのだ。(天才という例外はいるだろうが)

 

本作の主人公である「ハクオロ」は見事な軍略家だ。

彼の将としての才能が、本作を良作たらしめている決定的な要素だろう。
終盤にファンタジー要素全開になるまで、主人公たちの勢力が成長していったのは、間違いなくハクオロの軍事的才能によるものだ。

「戦わずして勝つ」とか「戦う前に勝っている」といった圧倒的な鬼才ではない。
だが、戦う前に最大限の戦略的下地を整え、条件を整理して、勝てる戦いをしようとする。
超兵器もファンタジーも出てくる本作だが、ハクオロはそれに頼ることなく、きちんと軍略で勝つのだ。

不敗の魔術師や常勝の天才ではなくとも、しっかりとした戦略性を魅せることで、物語はここまで充実する。

他の失敗大河ロマンは、ヤン・ウェンリーに恋い焦がれるより、まず本作を見習うべきだろう。
丁寧に作り上げられた物語は、破綻なく充実する。
安直な逃げ道に走らない実直なシナリオこそが、本作最大の魅力だ。

ちなみに次回作におけるハクにも是非見習って欲しい点だけどね

 

最大の欠点はハクオロの完璧さにある

さて、そういうわけで絶賛させて頂いた主人公であるハクオロ氏だが、同時にこのアニメにおける最大の欠点でもある。
それは何かといえば、

 

「感情移入しにくい」

 

という点だろう。
ハクオロの欠点、本作の欠点はこれに尽きる。

彼は悩みもするし悲しみもする普通の人間だが、あまりにも成熟した大人過ぎる。
畢竟、少年のような冒険心や青春の心の乱れのようなものは本作に存在せず、視聴者が世界に入り切ることを阻害する要因になっている。

 

物語における「感情移入」や「共感」とは…

そもそも私は、「感情移入」だとか「共感」という言葉があまり好きではない。

「この主人公は感情移入しにくいよね~」
「共感できないよね~」

という話を聞くし、現にさっき私もしたばっかりなのだが(笑)、物語において「感情移入し難い」というのは、製作側の甘えた表現だと思っている。
よほど人格が破綻した異常者でない限り、感情移入し難いキャラクターなど存在しないと私は思っている。

 

「感情移入できないキャラクター」なのではない。

「感情移入できるエピソードを描けていない」だけなのだ。

 

結局、「個」に焦点が当たっていない

つまり、キャラクターに焦点をあてたエピソードが描けていない。
本作の最大の欠点はこれに尽きる。

各キャラクターは魅力的だが、主人公であるハクオロについての掘り下げが浅いのだ。

 

もちろん、これは原作がギャルゲー(えろげー)であるという事実も多分に影響している。
原作のジャンル的に、とにかく女性を描くことが重視され、主人公の描写はそれほど重要視されない。
というより、ギャルゲーの主人公など、「個性が薄い方がよい」のだろう。

読者はこの不思議な世界で、たくさんの女の子と仲良くなるというのが、ギャルゲーというジャンルの本質だ。
「うたわれるもの」がどんなにストーリー重視の良作であっても、その本質に違うものではない。
そこに主人公の主観は必要なく、その主観はプレイヤーが独自に抱くべきものだ。

これはノベルゲームというジャンルとアニメの視点の違いにある問題だろう。

 

作中において、ハクオロは思い悩むシーンは結構多い。
多いが、深くない。
アニメとしての尺の問題はあるのだろうが、これが「感情移入しにくい」最たる問題ではないだろうか。

 

戦国絵巻としてもキャラアニメとしても気軽に楽しめる

色々言ったが、逆に言えば人間ドラマの部分が淡いままだからこそ、気軽に楽しめる作品との見方もできる。

決して話が薄いわけではないし、キャラクターもそれぞれに個性豊かだ。
何といってもこういった戦国絵巻物語が、破綻なく真面目に完走できた作品はそれだけで稀有である。

多くの人におすすめできる、安定作であると言えるだろう。


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セトシン

セトシン

子育て中三十路副業ブロガー。「天地無用!」の砂沙美ちゃんに魅了され、アニメの世界にどっぷり浸る。 アニメはとにかくシナリオ重視。芯のあるアニメが大好き。泣きたいけど泣かせにかかる要素は大嫌い。とにかくハッピーエンドで泣かせて欲しい人。

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