「異世界の聖騎士物語」レビュー! ドタバタラブコメディは決してオワコンに非ず!

      2016/08/30

異世界の聖機師物語 BD-BOX [Blu-ray]

発表時期 2009年5月~2010年5月
原作 梶島正樹
公式HP http://www.vap.co.jp/seikishi/

大国・シトレイユ皇国の王が急死し、わずか12歳で皇位を継いだ姫王ラシャラ・アース二十八世。
剣士は彼女の暗殺を狙う一派に捕らえられ、元の世界に帰す 条件として、彼女の暗殺を命じられる。そして戴冠式を終えたラシャラを仲間のドールと共に襲撃し、圧倒的な力で護衛のキャイアやワウワンリーを蹴散らす が、慣れない実戦のために力尽きてしまう。
今度はラシャラ達に捕らえられた剣士だったが、剣士が異世界人であることや、脅されていたことを知ったラシャラ は彼を保護し、従者に迎え入れた。

評価得点:79点(傑作になれなかった佳作…)

 

※ネタバレを含みますので、注意してお読みください。

 

天地無用!の梶島正樹の意欲作

90年代のアニメ好きなら、「天地無用!」や「梶島正樹」の名前に反応しない者はいないだろう。(多分w)
昨今市場に氾濫するドタバタハーレムラブコメアニメの、一種の祖的な存在ともいえる「天地無用!」の原作者が、ついに沈黙を破って世に出した新作が、この本作である。
その中身は、懐かしくも新しいドタバタラブコメディの味わいと、数多の伏線に彩られたファンタジー作品の香りが絶妙にブレンドされており、「ああ、梶島正樹の天地無用!はこんな感じだよな!」となつかしさを覚える人もいるのではないだろうか。

 

ドタバタラブコメは時代を超えたか?

さて、天地無用の梶島正樹といえばやっぱり「ドタバタラブコメディ」なわけだ。
当然、本作にも期待してしまうのはソコである。

ただ、ハーレムアニメの開祖的な存在とも言われる天地無用だが、別に主人公が女にモテまくるのが面白いアニメではない。
そこでドタバタするヒロインたちに、しっかりと練り込まれたキャラクターがあるからこそ、話がしっかりと根付く。
きちんとしたエピソードに裏打ちされたキャラクターの個性が、飾り気なくラブコメするからこそ面白いのだ。
天地無用のフォロワーの多くはそこを誤解して、単純に「女の子に囲まれる主人公」を描いて散っていったのであります。

 

本作はどうか。

これが絶妙に面白い。
決してぶっ飛んだキャラクター設定があるわけではないが、ヒロイン個々の動きがコミカルで個性付けも明確だ。
加えて主人公である剣士の性格に嫌味がなく(本当に動物みたいw)、モテるのも納得できるため、出来の悪いハーレムアニメに多い「ウザ主人公」臭も皆無だ。

また、和気藹々(殺伐?w)としたドタバタの裏側で、様々な政治的事情がうごめくのも、梶島ラブコメらしさだろう。
様々な陰謀や政治的な駆け引きが裏で動き回り、日常ドタバタとの良いコントラストが描かれている。
伏線もしっかりと張り巡らされて、次の展開への興味も尽きない。

 

思い起こせば10年以上前に、天地無用!魎皇鬼シリーズに魅せられたのは、こういった要素ではなかっただろうか。
個人的にはそういう懐かしさも感じさせられながら、Blu-rayでヌルヌル動く本作を見るのは、中々に新鮮だった(笑)

本作にて展開される要素には、確かに90年代の残り香を感じる。
だがそれは決してネガティブな意味ではなく、よく整理されたラブコメディは、現在も過去も変わりはないという、ただそれだけのことだろう。

 

ラシャラ様はメインヒロインとして申し分ない神々しさを備えておられるのだが、面白かったのがキャイア。

ヒロインの中ではひねりが薄く、「もうちょっと何かあるやろ!」的な感じを受けた一方で、圧倒的個性が立ち並ぶ中の普通のお姉さんとして、非常に良い味を出している。
自分の想いに悩むことも多く、一番感情移入しやすい女性キャラかもしれない。

 

お姉さん系のキャラが多いヒロイン部隊

正直、キャラデザには好みがあると思う。

良くも悪くも梶島正樹氏、媚びたキャラは書かない。
さりとて、お色気はきちんと重視する。
この色気の描き方が萌え路線とは完全に異なり、全体的にテイストは天地無用時代よりアダルティに進んでいる気もするが、まあ完全に好みの問題だろう。

昨今の萌えアニメの絵柄には、あまり共通性はないと思います。

 

最大の弱点はシリアスパートに…

本作における最大の問題点は、むしろメインエピソードとなるシリアスパートだ。

はっきり言って、ドタバタラブコメやってるだけなら全然良かった。
神アニメだった。
傑作過ぎて困ると手放しで称賛していられた。

……シリアスパートなんてないほうが良かった。

個人的には、そんな出来栄えでした。

 

心情描写が稚拙

この責任が奈辺にあるのかはわからない。
ただし、とにかくシリアスシーンにおけるキャラクターの心情描写はあまりにも稚拙だ。
一応ネタバレ無で書いてるので具体的なシーンは避けるが、基本的に「女の涙」の書き方が出来ていない。

少し乱暴な言い方をすると、シリアスパートでの個々人の感情の動きが適当なのだ。
シナリオ側のご都合主義的なにおいが見え隠れする。

 

これは恐らく、各キャラクターの描画が浅いために発生する問題だろう。
ギャグパートとしてのキャラクターは完璧に成立しているのだが、そのキャラの本音の部分がチラ見せ程度にしか語られていない中で、本筋に入ったたための弊害と言える。

特にメインヒロインであるラシャラ様は、主人公である剣士に対する感情の機微を、もうちょっとはっきり描いてもよかった。
彼にとって剣士が何なのか、判然としないまま物語が進んでいってしまった感が強い。
彼女の描き方を、日常シーンの中からもう少しづつ「女の子」に寄せることができていたのなら、本作終盤のシリアスシーンにおいては、替えの利かない「締まり」を生み出すことができたはずだ。

スーパー剣士くんが他を蹂躙する爽快感は、シリアスパートに対する本作の「割り切り」がもたらしたある種の副産物だが、ここで彼を見守るメインヒロインの瞳が揺れていたら……物語に別種の味付けをもたらすことができだだろう。
最も、それがファンの期待する「天地無用!」かと言えばそうではないわけだが、そもそもこの作品は「天地無用!」じゃありませんしねw

 

また、とにかくドタバタラブコメにつなげようとする意識が高すぎるのか、シリアスシーンの後に強引に挟まれる日常シーン系なやり取りには一気にテンションが冷める。

 

ぶっ飛び超展開

まあ尺の問題も話数の都合もあるし、伏線の魅せ方に限界があるのは仕方ない。

仕方ないのだが、もう少し関連性を持たせてチラ見しながらお話しをすすめてよぉ……というのが、何点か。
後から考えたら、「ああこの辺は全部伏線だったんだなぁ」とわかるパターンが多い。
伏線というのは、本来視聴者に「その謎の正体は何だ!?」と強烈に意識させることで、物語に深みとメリハリを生み出すアイテムなわけだが、本作……というか全体的に天地無用系はそのあたりが薄いです。

梶島正樹氏の代名詞とも言えるぶっ飛び超設定は、本作も健在だと言っておこうww

 

コメディアニメとしての出来は流石の一言

シリアスパートの不出来故に総合しての評価は高くない。
天地無用!魎皇鬼やGXPに比べても、シリアスパートの出来は芳しくないだろう。

ただし、コメディパートの出来は流石の一言だ。

「日常を見ることこそ最大のコメディ」と言える作品で、神域に評される天地無用!魎皇鬼の第七話「お祭り前日の夜」の正常進化が見て取れる。
この完成度は、最近のアニメでは中々見られない。

ていうか、個人的にはそもそもドタバタラブコメがオワコン扱いされている感を感じているのだが、しっかり描かれたホンモノはきちんと面白いという事実を、この作品は明示しているのではないだろうか。

 

余談だが、天地無用!魎皇鬼はまさかの第四期!!
どうなることか、楽しみ半分、怖さ半分です(^^;

 

→天地無用シリーズはこちらにまとめてみました♪


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セトシン

セトシン

子育て中三十路副業ブロガー。「天地無用!」の砂沙美ちゃんに魅了され、アニメの世界にどっぷり浸る。 アニメはとにかくシナリオ重視。芯のあるアニメが大好き。泣きたいけど泣かせにかかる要素は大嫌い。とにかくハッピーエンドで泣かせて欲しい人。

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