設定だけではない、上質な青春群像劇 アニメ「キズナイーバー」 レビュー

      2016/10/19

キズナイーバー 6(完全生産限定版) [DVD]

 放送時期  2016年4月~6月
 原作  アニメオリジナル
 公式HP  http://kiznaiver.jp/?from=lower

あらすじ
舞台は、埋立地に作られた街・洲籠市。
かつては未来型都市として栄えたこの街に住む高校生・阿形勝平は、なぜか痛みを感じない不思議な身体を持っていた。
夏休み目前となったある日、勝平は謎の少女・園崎法子の手引きにより、痛みを共有する仲間「キズナイーバー」の一人に選ばれてしまう。
そして、同様に「キズナイーバー」として繋がれたクラスメイトたち。
しかし、彼らは本来なら仲良くなることのない別々のグループに属していた。
互いの傷を背負うことになった、少年少女たちのひと夏の物語がここから始まる…

 

評価点数:78点 ★★★☆☆ (佳作)

 

*ネタバレは含みません

 

しっかりと描かれる青春群像劇

本作品の肝となる設定は、全く接点がなかった高校生の男女8人が痛みを共有するという「キズナシステム」である。
ありそうでなかった設定で斬新だが、若干ラノベっぽい設定だ。
そしてこのキズナシステムでつながるのは、痛みを感じない無気力系の主人公をはじめ、ドMや不思議系少女など、個性的すぎるがゆえにテンプレになりかけているキャラクター。
こんな作品を手掛けるのはキルラキルやニンジャスレイヤーなどの超個性的なアニメでおなじみのトリガーである。

ここまで聞くと、「ああぁ…」と思ってしまう人もいるかもしれない。
かく言う自分もそうで、あまり期待せず、「トリガーだから作画良いし、キャラデザも可愛いから見てみるか」くらいの気持ちだった。

しかし、良い意味で裏切ってくれた作品だった。
癖が強いキャラにもしっかりと感情移入できるようにそれぞれのエピソードをしっかりと描き、お互いが関わりあっていくことで変化していく様子をラブコメ要素を入れつつ、青春ドラマとしてしっかりと描写している。

キズナシステムという独特な設定も、ただ視聴者を引き付けるためだけに作りましたというわけではなく、しっかりと脚本に活かし、この設定が最初から最後までこの作品の中心になっている。

このアニメは昨今のラノベアニメが見習ってほしいくらい、丁寧に描かれた青春群像劇であったと言えるだろう。

 

主人公として成長していく主人公

本作品で自分が個人的に一番好きだったのは主人公がしっかりと成長していく点だ。
第一話の時点では主人公のことを好きになるどころか、全くの逆で、おそらく自分の一番嫌いなタイプの主人公だった。
無気力で、他人のことを何も考えてなくて、カッコよいところなんて一つもないのに、何でこんなかわいい幼馴染がそばにいるんじゃい!!と憤慨していた。

しかし、キズナシステムにより他人と痛覚を共有することで、「痛み」を知る。
それは決して肉体的な痛みだけではない。
無理やりではあったが、他者と関わり、「痛み」に触れることで、少しずつ人間らしさを取り戻していく。
「痛み」を感じることで、他者を思いやることができるようになっていく。

こうして人間らしさを取り戻していく主人公の様子が非常に面白かった。
ただ普通の人に戻っていくだけではなく、キチンとカッコよい主人公に成長していく。
時には悩み、傷つきながらも、一歩ずつ成長していく。

こうした主人公の成長を1クールかけて丁寧に描ききったことが非常に好感触だった。

 

キャラクター設定のさじ加減が絶妙

このアニメの登場人物はよくも悪くも個性的だ。
前述した主人公のように、はっきりと示されている個性に、最初は嫌悪感を示し、キャラクターを好きになるのは難しい。
誰だって不思議系少女や暴力ヤンキーや病気的なドMのことをはじめから好きにはなれないだろう。
だが、このアニメの素晴らしいところはこうしたキャラの個性を捨てずに、人間らしさをちらりと見せるところだ。

物語の中で、少しずつだが、自分たち普通の人間と同じような感覚や悩みをキャラクターが持っていることを描いていく。
変人かと思いきや、意外とまともなところもあるんですよと、しっかりと描写することで、それぞれのキャラクターに感情移入させていく。

第二の主人公ともいえるニコちゃん

特に自分のお気に入りのキャラクターは新山仁子という不思議系少女キャラだ。
このキャラ、最初は全く感情移入できないが、話が進むにつれどんどん魅力的になっていく。

彼女の一番の目標は「友達をつくること」だ。
不思議系少女の彼女には友達らしい友達がおらず、それゆえ、周りの人たちと仲良く、友達になろうと精一杯努力する。
もともとぼっちだったため、距離感がわからずに暴走することもあるが、その必死でまっすぐな様子がとても可愛らしい。
ぎすぎすとした雰囲気に作品がなっても、彼女の一言でグッと明るくなる。
一種の清涼剤のような役割も果たしていた。

これは、不思議系少女というキャラだからこそあまり嫌味を感じずに描写できたのだと思う。
あのビュジュアルとしゃべり方に、この役割を担わせたのは、大成功だろう。
後半では彼女の言動が物語に影響を与えることも多々あり、まさに第二の主人公といった感じだった。

 

中盤の青春ラブコメ展開は最高だが・・・

物語序盤でキャラ紹介をし、徐々に感情移入をさせつつ、中盤にはラブコメ展開にはいっていく。
もちろんただラブコメをするのではなく、中盤でもしっかりと主人公や他のキャラは成長していく。

この中盤の盛り上がりは個人的には最高だった。
キャラクターに感情移入をしっかりさせられた後で、あまりドロドロすることもなく、三角関係のような展開になっていき、目が離せなくなる。
夏合宿での肝試しなど青春系イベントがわかりやすい盛り上がりを作ってくれるし、一つ一つのエピソードの完成度も高い。
文句なしの神作になるかと思ったのだが…

終盤のドロドロラブコメ展開はやりすぎ

正直な話、終盤のラブコメ展開に自分は少し引いてしまった。
中盤のラブコメ展開には、キャラが恋する理由や伏線を貼られていたが、後半になるととりあえずドロドロにしとくかといった感じでキャラが恋してしまう。
具体的には、先述したニコちゃんがあるキャラに恋するのだが、その理由や伏線の描写が一切なく、本当に突然だったため、この展開は必要なのかと感じてしまった。
物語が終わってから振り返っても、ニコちゃんの恋愛描写は作品にとってマストではない感じがしたので、なおさらだった。

ニコちゃんは「友達として、皆をつなぐ」という大事な役割を果たしていたために、このラブコメ展開は蛇足にしか感じなかった。
完璧だった脚本の唯一の欠点ともいえるだろう。

 

序盤さえ乗り切れば

とにかくこの作品、1話、2話が非常にキツイ。
キャラデザと作画が非常に優秀なので、女の子の可愛さ目当てに見ることはできるが、濃いキャラクターが一気に登場し、さらにごり押し展開の後のキズナイーバーという独特の設定。
密室空間に閉じ込められてミッションをクリアしなければ外に出れない展開など、こういう展開にワクワクできるならばいいが、自分のようにげんなりしてしまう人もいるだろう。

だがそこを乗り越えれば、あとはどんどんと面白くなっていく。
好きなキャラはどんどん増えていくし、次回への引きもこういった作品の中では上手い部類にはいるのでどんどん話数を消化できるだろう。

終盤はドロドロラブコメ展開で若干gdるものの、最終回では主要登場人物たちの関係も修復し、大きな問題も解決されての大円団となっている。1クールできれいに物語を終わらせいるのも好印象だ。

キャラクターはみんな好きになれたし、ぜひとももう一度彼らのドタバタコメディが見たいと思えたので、OVAか何かで続編があるのを期待してしまう出来だった。
あまり話題にはならなかったが、上質な作画と脚本でおすすめできる作品だろう。


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ビッテンk

ビッテンk

熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

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