名高き「ソードアート・オンライン」のアニメ版をレビュー! その真価は如何に!?
2016/08/30
放送時期 | 2012年7月~2012年12月 |
原作 | 川原礫 |
公式HP | http://www.swordart-online.net/ |
2022年。
世界初のVRMMORPG「ソードアート・オンライン」(SAO)の正式サービスが開始され、約1万人のユーザーは完全なる仮想空間を謳歌していた。
しかし、ゲームマスターにしてSAO開発者である天才プログラマー、茅場晶彦がプレイヤー達の前に現れ、非情な宣言をする。SAOからの自発的ログアウトは不可能であること、SAOの舞台「浮遊城アインクラッド」の最上部第100層のボスを倒してゲームをクリアすることだけがこの世界から脱出する唯一の方法であること、そしてこの世界で死亡した場合は、現実世界のプレイヤー自身が本当に死亡するということを……。
評価得点:★★★☆☆ 75点(佳作)
※ネタバレを含みますので、注意してお読みください。
目次
安定した作画と斬新な世界観
さしあたって表層的なコメントを並べるとすれば、本作は
「安心して見られる良作」
である。
作画にもストーリーにも飛び抜けた感じはないものの、安定している。
世界観は斬新だし、各キャラクターはそれぞれに個性的だ。
他人にこのアニメについて聞かれたら、間違いなく「うん安定して面白く見れると思うよ」と勧められるだろう。
ただし、それは原作を読まずにアニメ版だけを撫でた人が持つ感想だろう。
このアニメだけを見た人は、何故この「ソードアートオンライン」という作品が、これほどまでに高い知名度を誇るのかが理解できないに違いない。
安定してはいるが引き込まれるほどでもなく、斬新ではあるが何故か驚きは薄い。
「まあよかった、だから?」という作品である。
そして原作を読んだ人からすれば、「……あれっ?」な印象を持つに違いない。
どうして「この程度」なのか
別につまらないわけではない。
作画もそこそこ安定しているし、キャラクターもカワイイ。
物語も破綻なく、斬新だ。
原作の質の高い物語を忠実に再現し、バーチャル世界の美しいビジュアルも見事に映像化されていると思う。
しかしながら、本作については、「ショボイ」と断言せざるをえない。
原作の圧倒的な出来栄えと比較して、TVアニメは「普通のライトノベルアニメ」に落ちてしまっている。
電撃文庫の歴史に名を残すレベルの名作の、栄えあるTVアニメ初作としては、完全に「失敗」だと言ってもいい。
別にストーリーを改悪しているわけでもないのに、何故なのだろうか。
あまりにもすべてが軽い
優しく可愛らしい絵のタッチを含め、TVアニメはパーツ単位で見れば決して悪いものではない。
が、しかし。
あまりにもすべてが「軽い」のである。
原作にあった「デスゲーム」としての重厚感がすべて取り払われ、
「ゲーム世界に閉じ込められた俺たちが頑張って脱出を目指すアニメ」
に成り下がっている。
生死を賭けたサバイバル感が物語全体にきわめて薄いのだ。
恐らく、原作者が最も腐心してきたであろう、
「バーチャルゲームと現実をリンクさせるためのリアリティ」
がアニメ版にはとにかく足りていない。
シナリオ全体から緊張感が生まれて来ないため、畢竟物語の臨場感も不足しがちだ。
このアニメ作品に最も足りないものは、そこだろう。
萌えアニメではなく、デスゲームとして描くべき
正直、マッドハウスにアニメ化してほしかった(笑)
原作であるSAOは、もちろんアスナをはじめとした魅力的な女性キャラクターに彩られた、ラノベらしい側面も持った作品だ。
ただ、この作品を名作たらしめる最たる要因はやはり、「臨場感」である。
「何人死んだ……?」
的なやり取りがもたらす重々しい空気。
原作で繰り返し描画され、強調される死への恐怖感。
すぐ傍にある現実の自分の終端。
著者の高度の文章センスも含めて、作中から出る圧倒的な臨場感が失われた結果が、このアニメだ。
SAOは革新的な物語ではあるものの、その圧倒的な面白さはあくまでも、川原氏の文章力とセットになっていてこそ、生み出されたものだったに違いない。
アニメとしてデスゲーム感を維持するためには…?
ではどうすれば良かったのかと言えば、正直難しい。
確かに、原作を何も考えずに映像化したら、こうなるだろう。
アスナを中心にした女性キャラクターはあくまで「可愛い」が根底のデザインだ。
それに合わせて世界観を映像化するなら、このアニメ版に行きつく。
個人的には、作画的にはキャラクターたちの「変顔」をもっと描くべきだと思う。
……いきなり語弊のある言い方だが、つまり「生死のやり取りの直前・直後に相応しい切羽詰まった表情」が感じられないわけだ。
アスナが目を見開いて肩で息をしている表情をするだけで、雰囲気は変わって来るのではないか。
また、とんとん拍子に話が進み過ぎている。
余分なエピソードを排してもいいから、一つ一つの間をもっと意識すべきではないだろうか。
戦いが終わった後の余韻、始まる前の緊張感、世界に対する終わりない絶望……。
空白をもって演出するべき要素は、多々あるはずなのだ。
滴り落ちる汗だったり。
終わらない心臓の鼓動だったり。
止まらない呼吸の荒々しさだったり。
そういう細かい演出を入れていくことで、作品の雰囲気を徐々に変えていくことができるんじゃないだろうか。
面白いのだが、もっと上を目指して欲しかった作品
何度も言うが、アニメとして別につまらないわけではなく、大過なく面白い。
特にアニメ版のキャラクターデザインや世界のイメージはとても美しく、素晴らしいと思う。
だからこの情感を維持したまま、圧倒的なデスゲームを描くのはかなり難易度の高い話であることもまた、わからないでもない。
ただ、期待したのは「もっと上」であることもまた、事実だ。
この素晴らしい世界観を保った上で、原作の息も凍るような臨場感や迫力を生み出すことができれば、本作はもっともっと上に行けた作品である。
私はアニメを見るときに、「演出」「作画」といった要素はあまり気にしない(ストーリーばっかり見る)のだが、本作についてはそこが凄まじく気になりました。
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セトシン

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