作画は良いが、展開が… アニメ「甲鉄城のカバネリ」レビュー
2019/07/22
放送時期 | 2016年4月~6月 |
原作 | アニメオリジナル |
公式サイト | http://kabaneri.com/ |
あらすじ
近代が訪れつつある時代、鋼鉄の皮膜に覆われた心臓を打ち抜かなければ倒せない不死の怪物「カバネ」が出現した。
噛まれた者もまた、死んだ後にカバネとして蘇って人を襲うようになるため、カバネは爆発的に増加。
島国・日ノ本の人々はカバネの脅威に対抗するべく、各地に「駅」と呼ばれる砦を築き、駅同士を分厚い装甲で覆った駿城(はやじろ)で行き来し、生産物のやりとりをして生き延びていた。
顕金駅(あらがねえき)に暮らす蒸気鍛冶の少年・生駒は、駿城に乗ってきた少女・無名と出会い、自ら作り上げた武器・ツラヌキ筒を持って、カバネとの戦いに身を投じる。
評価:★★☆☆☆ 60点(視聴可能)
*ネタバレは含みません
目次
圧倒的な作画、質の高い第一話
本作品の最大の売りは、PVの段階から度肝を抜かされた高クオリティな作画だろう。
マクロスなどのキャラデザをした美樹本晴彦氏の絵が、全く劣化することなくグリングリンと動きまくる。
さすがと言うべきか、女性キャラは可愛いし、男キャラもみんなそれぞれの個性が出ている素晴らしいキャラデザだ。
さらに、ただ枚数をかけて動くだけではなく、アニメにしかできない気持ちの良い動きを見せつけてくれる。
おまけにこの作画は基本的に終盤まで劣化することはない。
制作は進撃の巨人と同じということが納得できるような、素晴らしい作画の出来だった。
期待感を抱きながら見た第一話も、つかみはばっちりであった。
世界観をダラダラナレーションで説明するのではなく、登場人物たちの行動によって示していく。
それぞれのキャラの特徴や個性も第一話の序盤でわかりやすく示し、視聴者をすっと物語の世界に入り込ませる。
そして後半では高クオリティなアクションシーン、主人公の覚醒と、盛り上がる展開を入れつつ、しっかりと次回への引きを作る。
お手本のような第一話に、この作品への期待値は大きく上がった。
が…
展開がベタすぎ
このアニメ、本当に展開がベタベタなのだ。
自分が見ていて予想外の展開にでくわすことは全くないと言っていいくらいベタベタだ。
自分が大量にアニメを見ているから、ではなく、少しでも「ゾンビもの」の作品を見ていれば想像がついてしまう展開しかない。
だが、脚本が雑というわけではない。
物語に破綻するような矛盾はないし、一応各キャラのエピソードもあるし、展開自体は自然に行われている。
おそらく、脚本が悪いというより、作品のプロットというか、流れに問題があったのだろう。
「ベタなゾンビもの」を描くうえで最低限の脚本はかけている。
が、描く物が「ベタなゾンビもの」である以上、脚本が手を加えられるのはここまでか、といった感じはする。
キャラクターもなんか薄い…
「ベタ」な展開を「王道」展開と視聴者に感じさせるには、やはり何よりもキャラの魅力が必要だと自分は思っている。
しかし、このアニメのキャラクターは薄い。という印象しか受けなかった。
結局、「これどっかで見たことあるわ」と言えるキャラしか作り出せていない。
突き抜けたキャラがいないのだ。
さらに、各々のキャラクターのエピソードも薄い。
例えば主人公の過去にしても、妹がカバネに殺された、だから俺はカバネが憎い、というようなエピソードなのだが、この描き方では全くもって感情移入できない。
妹の死ぬシーンも1分くらいであっさり終わるし、死に方も特に残酷というわけではなかった。
むしろこの世界ではこれくらい当たり前でしょ?と思ってしまう。
このように各キャラのエピソードもあっさりと終わってしまい、特に強烈なエピソードは全く見当たらなかった。
基本的に全キャラの魅力が見た目だけに終わってしまい、物語の魅力をあげることは全くできなかった。
そのため、この作品のベタさをなくすどころか、余計ベタさが増してしまうだけだった…
どうしても進撃の巨人と比べてしまう
同じ制作会社、同じ監督ということで、どうしても進撃の巨人と比べたくなってしまう。
ざっと比較してみただけでも、このアニメのダメなところ、そして進撃の巨人のすごさがひしひしと感じてしまう。
敵の強さの演出
まず、今作品は圧倒的に演出において進撃の巨人に後れを取っている。
あの作品は原作からして圧倒的に力を込めて描写しているのが巨人の恐怖である。
だが、この作品の敵である「カバネ」はちょっと硬くて速いゾンビ、という印象しか受けない。
また、あっさりと主人公たちもカバネを倒せるようになるので、絶望感が全く感じられない。
だから、倒したときの爽快感が全く感じられない。
ゾンビものとして、もう少し恐怖や強さを見せつける工夫をすべきだったろう。
サスペンス要素の欠如
進撃の巨人があそこまでヒットしたのは何も巨人の恐怖さやアクションシーンだけではない。
もちろん最初のつかみはそれだったのだろうが、それだけでは視聴者は飽きてしまう。
何よりも進撃の巨人の面白さの中核をなしていたのは、サスペンス要素なのだ。
具体的にいえば、主人公の巨人化、そして時々現れる知性を持った巨人の正体。
これらの謎が徐々に解き明かされていく展開によって、視聴者は飽きることなく作品を見続けられるのである。
カバネリにはこれがない。
2時間ほどで終わる映画なら単純にゾンビを相手にしているだけでよいかもしれないが、12話1クールで描かれるTVアニメでは、そうはいかない。
何かしら視聴者を飽きさせない要素が必要だ。
一応、同じ人間どうしの戦いや陰謀もあるのだが、これも笑ってしまうくらいベタで見え透いた展開なので、視聴者を引き付けるどころかあきれさせる要因にしかなってなかった。
進撃の巨人の半分でもサスペンス要素がこのアニメにあれば、大きく評価が違っただろう。
お金はかかっているだろうが…
本作品を全部見た感想としては、「予算はそこそこかかっているB級ゾンビ映画」をみた感じに近い。
とにかく、展開のベタさが本当につらく、それをごまかすキャラの魅力もないので、本当に見る動機が美しいアニメーションしかなかった。
一応脚本などのクオリティもある程度の基準は保っているので見れなくはないが…
なんとも残念なアニメだった。
蛇足ですが、アニメとして作品の完成度では、はいふりを超えているものの、ベタな展開で続きが読めてしまっていたので、雑な脚本で予想を裏切ってくれていたはいふり以上に視聴が辛かったです…
この続編である、『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』 のレビューはこちら!
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ビッテンk

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