化け物たちによる人間讃歌。 アニメ 「HELLSING(OVA)」レビュー!

      2016/10/19

HELLSING OVA I-V Blu-ray BOX(期間限定生産)

 発売時期  2006年2月~2012年12月26日
 原作  平野耕太
 公式HP  http://www.nbcuni.co.jp/rondorobe/anime/hellsing/index.html

あらすじ:反キリスト的モンスターの絶滅を目的とする大英帝国ヘルシング機関の当主インテグラが囲う不死身の吸血鬼アーカードによって、新米吸血鬼となったセラスの運命。
そしてアーカードとバチカンの特務機関イスカリオテに属するアンデルセンの死闘が描かれる。

評価得点:92点 ★★★★★ (名作)

※ネタバレは含みません

 

一見はB級グロアニメだが・・・

このアニメのあらすじを極端に解説してしまうと、

「最強で不死身の吸血鬼が、吸血鬼化したナチスの残党を容赦なくぶっ殺しつつ、同じくらい化け物のバチカンの神父と戦う話」

である。
このあらすじから想像されるように、序盤ではB級ゾンビ映画のような、グロテスクな戦闘シーンが続く。

第一話の時点で、このアニメはグロい戦闘シーンと、中田譲治氏のセクシーなボイスしか見どころがないと考えてしまうのも無理はない。
しかしこのアニメ、はっきりとしたメッセージが込められた少年漫画のような熱い作品なのだ。
B級映画の皮をかぶった少年漫画というべきだろうか。
この作品の根底にある「人間賛歌」をテーマとした熱い展開の数々に、後半は涙が出てしまうような場面もあった。

 

圧倒的な個性を持つキャラクター

「人間賛歌」を描くなら、主人公は人間であることがほとんどだ。
しかしこの作品は全く真逆の化け物が主人公だ。
そして彼の周りの登場人物にも普通の人間はほとんどいない。
皆、超がつくほど個性的、いやもはや狂っているといえてしまうようなキャラクターがこの作品の大半を占めている。

異教徒と化け物は絶対殺すバチカン神父、戦争が大好きでたまらない元ナチス、第九次空中機動十字軍でロンドン侵略しちゃう大司教。
正に狂人としか言えない濃さを持ったキャラクターばかりだ。

それだけでは確かにインパクトはあるが魅力的とは思うことができない。
このアニメのキャラの魅力は、ただ濃いというだけではなく、一本のブレない筋が通っているということだ。
それぞれのキャラがしっかりとした目的、信念、生き方を持っている。
その目的や信念は冷静に見たら頭のおかしいものもある。
だが自分の信念を曲げずにひたむきに生きていくキャラクターはひたすらにカッコいい、魅力的だ。

さらに、この作品のすごいところはこうした「狂人」なキャラだけではなく、「人間臭さ」を含んだ人物を作れるところだ。
完全な狂った人物ではなく、感情移入できるような仕草、動き、性格を持っているので、敵キャラであっても、どうしても嫌いになれない。主人公にやられそうになると思わず応援してしまうキャラもいるくらいだ。
ただの「狂人」ではなく、「理性を持った狂人」というべきか。
この絶妙なキャラ作りのセンスは非常にすばらしい。

さらに、視聴者に胃もたれさせないように、「普通」なキャラも用意されている。
無能で臆病な貴族、傭兵部隊の隊長、元婦警のヴァンパイア、こうした(あくまで他の登場人物に比べて)一般人なキャラを丁寧に、かつ感情移入できるように描くことで、他のキャラの濃さが際立っている。
そしてこれらのキャラは、後半の話の軸となる「人間賛歌」で、大きな役割を果たす。
普通な、貧弱でか弱い人間が化け物と戦う時にどうなるか。
普通な人間だからこそのパワー、熱さ、人間という素晴らしさを彼らは教えてくれる。

「最強の化け物」である主人公

こうした濃いキャラの中でも格別に個性的なのが主人公のアーカードだ。
最強系主人公は多くいるが、この作品ほどぶっちぎりで強い主人公はいないだろう。

そして何よりも他の最強系主人公と大きく違うのが、殺し方や戦い方、台詞や演出により主人公が悪役にしか見えないことだ(笑)

だがこの演出にもはっきりとした意味がある。
主人公が「化け物」であることを強調するためだ。
この演出は作品の根幹にある「人間賛歌」の展開に大きくつながっていく。

客観的に見て、どうあがいても人間では勝てそうにない「化け物」である主人公。
そんな彼の口癖は「化け物を殺すのはいつだって人間だ。」
彼自身に比べれば、はるかに貧弱で取るに足らない存在である人間を、彼は敬い、羨望している。
「化け物」である自分自身のことを嫌悪している。
だからこそ、彼は人間であることを捨て、「化け物」になってしまった吸血鬼には絶対に負けない。

このアーカードの無類の強さには、単純な「強い主人公」としては片づけられないメッセージが含まれているのだと、最後までこの作品を見ればひしひしと感じれるはずだ。

 

圧巻の展開をみせる終盤

この思い切りのよすぎる主人公の強さの設定は、見ていて非常に気持ちの良い。

全くぶれることなく、容赦なく敵を殺し続けていくのを見ているのは非常に爽快だ。
戦い方(というよりも殺し方)も多種多様であり、やりすぎと思うくらいな舐めプからの虐殺には独特の魅力がある。

しかし、この主人公の圧倒的な強さが、序盤に退屈さを感じさせてしまう原因にもなってしまっているにも事実だ。
言ってしまえばただ敵を一方的に殺しているだけであり、演出などで誤魔化しきれず、単調さを感じてしまう人もいるだろう。

ただ、この前半の圧倒的な主人公の強さを見せつける展開も、後半の物語に大きな興奮をもたらす重要な要素である。

物語の中盤に主人公のアーカードは敵の罠により、海のど真ん中に置き去りの状態になる。
こうして主人公が不在になったロンドンに、吸血鬼化したナチスの残党が侵略を開始するというのが後半の主な展開になっていく。

今までは主人公のアーカードが秒殺していた吸血鬼も、ロンドンの警察や軍隊では、全く歯がたたない。
主人公が属するヘルシング機関にも、はっきりと強いといえるのは執事のみで、他は完全な人間である傭兵団と、新米吸血鬼しか残っておらず、ナチスの吸血鬼たちに大きく苦戦する。

今までアーカードに頼り切りだった戦闘が、他の味方キャラクターが参戦するようになって、一気に緊張感を増していく。
自分たちよりも圧倒的に数も質も上回る敵の吸血鬼相手にどう立ち回るのかという逆境に立たされることで、戦闘シーンの面白さがグンと上がる。

さらに、物語の前半に圧倒的な主人公の強さを見せつけられているがために、「アーカードさえいれば…」という思いが視聴者に積み重なっていく。
ドラゴンボールの「悟空早く来てくれ」状態になるのだ。
こうして焦らしに焦らした後に、主人公のアーカード、唯一主人公と対等に戦える存在であるアンデルセン神父など、今まで登場した強キャラたちが一斉にロンドンに集結する。
男の子ならこの展開にワクワクしないはずがないだろう。

 

高クオリティな作画、豪華声優陣によるヒラコー節

こうした熱いドラマをより盛り上げてくれるのが、マッドハウスの高品質な作画と豪華声優陣だ。

素晴らしい作画スタッフにより、原作の濃くて独特な絵柄は見事に見やすく、迫力のあるキャラデザに落とし込まれ、すさまじい書き込みによって戦闘シーンの迫力が一段と増している。
演出も素晴らしく、BGMの使い方、止め絵のタイミングなど、非常に丁寧で文句のつけようがない。

そして、このアニメの素晴らしいところは「ヒラコー節」とも呼ばれる独特のセリフ回しの完全な再現を豪華声優陣で行ったことだ。
これはもう聞くしかないのだが、この「ヒラコー節」が非常に気持ちいい。
このセリフ回しがなければ、ここまでこの作品のキャラクターは立っていなかったと言えるだろう。

自分がこの作品を見るきっかけになったのがこのシーンなのだが、これだけ見ても他の作品とは違う独特なセリフ回しを感じられるだろう。
この独特の言い回し、テンポが好みな人ならば、この作品は大いに楽しめるだろう。
こういうのを中田譲治、 飛田展男、若本規夫、速水奨が演じるのである。
自分的には最高のご褒美でした。

 

序盤さえ乗り切れば間違いなく名作

序盤のエログロと、癖の強いキャラクターたちを乗り越えれば名作といえるのは間違いない。

今期から始まるドリフターズと同じ原作者の作品なので、もし気になったのならぜひとも見ていただきたい。
クセは強いがハマればどっぷりハマれること間違いなしだ。

 

ちなみにこの作品はこのOVA版の前にTVアニメ化されているが、そちらは原作者ブチギレのお粗末な出来であり、見る価値はほとんどないのでご注意を。


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ビッテンk

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熱いアニメが大好きな暇人。小池和夫じゃないけど、キャラクターを重視してアニメを見ることが多い。好きなキャラができれば多少の粗は見逃してしまう。飽きっぽいので途中で切ってしまうアニメが多いのが欠点。

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