実写でなくアニメである理由。奇跡の傑作、アニメ版「頭文字D」(FirstStage)レビュー!

      2016/09/15

頭文字[イニシャル]D フルスロットル・コレクション -First Stage Vol.1-(CD付き) [DVD]

放送時期 1998年4月~12月
原作 しげの秀一
公式HP http://initiald-portal.com/

藤原拓海は、ごく普通の高校生だが、誰も知らない秘密を持っていた。
彼は毎朝、家業の豆腐の配達の手伝いで、秋名山の峠を走りこむうちに、超絶的なドライビングテクニックを身に着けていたのだ。
そんな彼が、地元の走り屋チーム「秋名スピードスターズ」と、「赤城レッドサンズ」の抗争に巻き込まれて……。

 

評価得点:★★★★★ 93点(名作)

※ネタバレを含みません。

 

何故実写ではなく、アニメなのか?

人は何故アニメを見るのか。

 

考えてみれば、アニメは欺瞞と虚構の世界だ。
実写映画やドラマが、実在の人物、実際の世界の中で作られたリアリズムと臨場感に溢れるエンターテイメントであるのに対して、アニメーション作品はあくまでも架空世界に過ぎない。
描き出される構図は自由自在ながらも、具現性やリアリティにおいてアニメはあくまでもアニメ、誰かに描き出された偽物の世界でしかないのだ。

だが、我々はそんなアニメを見る。
人によっては実写作品を差し置いてまで、アニメーションの持つ不思議な魅力に取りつかれる。
あくまでも創作に過ぎない二次元世界に、我々はついついのめり込んでしまうのだ。

それは何故だろうか。

この作品「頭文字D」には、それに対する回答が無数に詰まっていると思う。

 

そもそも本作の内容を考えれば、別にアニメにする必要はない。
むしろ実在するクルマをテーマにした作品なのだから、実際のクルマを使った実写映画のほうがリアリティが出るだろう。
現に実写映画も存在するし、それが決してつまらないわけでもない。
ファンタジー要素が強いわけでもなく、敢えてアニメで作品を視聴する理由は見当たらないかに見える。

ただし、それでも「頭文字D」は、このアニメ版こそが至高であると断言できる。

実写映画も、漫画原作も決して及ぶことはない。
この作品がアニメであってくれたからこそ、出来上がった素晴らしいエンターテイメントの世界が、この作品にはある。
まるでアニメの魅力を根限り濃縮したかのような魔法が詰まっているのだ。

この本作があまりにも輝いて見えるワケ。
それこそが、多くの人が「アニメ」という文化をこよなく愛する理由の一つなのではないだろうか。

 

CGはしょぼい、だがそれがどうした!

恐らく、本作最大の問題は、レースシーンのCGのショボさだ。
ステージを重ね、時代が進むごとに改善されていくわけだが、少なくともFirstStageにおけるCGの出来栄えは決して褒められたものではない。

ではCGではなく、手書きで書けばいいのではないかと言えば、話はそう簡単ではない。
レースシーンをセル画で再現するのには相応の枚数が要求され、莫大なコストが必要とされる。
とてもではないが、毎週放送のTVアニメ作品で、スケール感や迫力に不足のないレースシーンを描き上げるのは不可能だっただろう。

畢竟、レースシーンは現在の時代から見れば失笑ものの安っぽいCGに落ち着いている。
自動車の動きはスローだし、特に回りの背景に至ってはスーパーファミコンのCGでももう少しうまく描けるような「紙芝居」なレベルだ。
この点は本作の最大の欠点であり、現在の作品と相対的に見比べるにあたり、弁明の余地はないだろう。

 

ただし、このCGのショボさが気になるのは最初だけだ。

 

いつのまにか、入り込んでしまうのだ。
スローなCGを見飽きることはなく、むしろそこに描かれるレース展開に白熱し、興奮する。
それこそが本作の持つ、アニメとしての魔法の力ではないだろうか。

要所で挿入されるブレーキやアクセルのペダル操作、ヒールアンドトゥ。
スポーツカーならではのミッション操作、それに合わせて動くタコメーター。
バックミラーを気にしたり、苦虫を嚙み潰したり、展開に応じて臨場感を持つキャラクターの表情。

そう、カットインだ。
まるで魔法のように、随所でふんだんに挿入されるカットインがレースの臨場感を飛躍的に高めてくれる。
我々の興奮を煽り、物語に見入らせてくれるのだ。

この魅せ技が、恐らく本作の持つ最強の武器だろう。
以後の作品、実写映画や新劇場版等を見ても、演出は様々にある。
あるのだが、本作のそれは別次元だ。
セル画ならではの作画の質、抜群のタイミング、秀逸な構図、そして重ねられる声優の抜群の演技により、本作のレースシーンにおける高揚感は他を圧倒する。

 

またスピード感に劣るCGも、逆にレース展開をじっくりと再現する要素となっており、親しみやすい面もある。
しょぼさはぬぐえないが、局面を再現する個々のシーンの描き方は絶妙であり、技術的限界の中でも渾身の演出を描き出した、当時のスタッフの苦労が至るところで散見される。

当然、土屋圭市氏を監修に迎え入れたことによる、レースシーンの高い再現性も見逃せない。
ライン取り等の技術的な面もそうだが、やはりここでも演出が素晴らしい。
エンジン音は実際のクルマ(各車種)の音を使用しているし、スキール音も間違いない本物で臨場感が高い。

アニメだからといって、架空で終わらせようとしているわけではないのだ。
CGがしょぼくても、様々な要素で工夫をこらし、臨場感を盛り上げている。
最もCGがしょぼいのはFirstStageで間違いないが、最もレースが白熱するのもまた、FirstStageで間違いないだろう。

 

最高の声優と抜群の台詞回し

イマサラ何を言うのだという話でもあるが、とにかく男性声優の演技がいちいち素晴らしすぎる。

主人公である拓海の三木眞一郎氏もさることながら、高橋兄弟には子安武人&関智一、GT-Rの中里には檜山修之、池谷先輩なんか矢尾一樹ですよ……。
90年代の最強部隊じゃないっすか!

その声優陣から繰り出されるのは、あまりにもキレ味鋭い名台詞の数々だ。
少年マンガ的なアツいノリで繰り出される台詞の数々は、物語の臨場感を盛り上げに盛り上げる。普通に車を運転していて、煽られたこう叫びたくなるものだ。

「上等じゃねぇか! コーナー二個もぬけりゃあバックミラーから消してやるぜ!!( ゚Д゚)ノ」

もちろん、すぐに道を譲る私でしたw

 

秀逸の序盤のストーリー展開

珍しく演出面で滔々と語ってきたが(笑)、やはり本作の最大の魅力はストーリーにこそある。

地元スピードスターズと、有名な走り屋チームであるレッドサンズとの間に勃発した抗争(といっても交流戦だけど)に端を発し、「秋名のハチロク」がデビューしていくわけだが、この流れがあまりにも素晴らしい。
序盤の初バトルシーンから、交流戦での決戦までの流れは完璧だ。

物語の骨子とは、ヒーローが活躍することにある。
後はそれを如何に盛り上げるかの手法が問われるのであって、それ以外の要素は枝葉に過ぎない。
本作は「秋名のハチロク」と主人公である拓海を「如何に魅せるか」をとにかく突き詰めた作品だ。
エンターテイメントとはかくありなん、という教科書のような魅せ技に、多くの視聴者は手に汗を握りしめるに違いない。

交流戦があまりにも白熱し過ぎるために以後やや盛り下がる感は確かにある。
しかし、交流戦の次に出てくるのが「最強」のR32スカイラインGT-Rであるので、ここまでは何の問題もないだろう。
むしろ、なんとも豪華で魅せ放題なストーリー展開ではないだろうか(笑)

このR32戦後はさすがに登場する敵(特にクルマ)においてインパクトが薄くなっていくので、やや失速感はある。
だが、シビックやシルエイティなど、それぞれに魅力的な車種と個性的な敵キャラが出てくるので、それでも問題なく十分楽しめる範囲だろう。

もちろん、ラストバトルは抜群だ。

 

頭文字Dが今でも抜群の知名度を残すのは、別に走り屋をテーマにした物語が奇抜だからでも、86がカッコいいからでもない。
単純に、このFirstStageのストーリーが圧巻だからだろう。

 

クルマに興味がなくても問題なし!

正直、あまりにも面白いので、クルマに興味がなくても全く問題ない。
アニメの魅力がこれでもかと詰まった、90年代を代表する名作だ。
欠点がないわけではないが、それを補ってあまりある魅力が詰まっている。

本作が実写ではなく、アニメである理由。
そしてアニメである本作が、恐らくシリーズ最高のエンターテイメント作品である理由は、アニメならではの魅せ技の豊富さ、そしてその魅せ技を支えたスタッフの総力にある。
コンテ、作画、声優、脚本……すべての面で超絶技巧を駆使したスタッフの総力こそ、本作を奇跡の作品に昇華させた最強の矛なのだろう。

そしてアニメ視聴後、クルマに対する考え方が180度変わってスポーツカーをお買い上げになられるかもしれないが、自己責任でお願いしますww
私はシルビア買いましたけどww

 


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セトシン

セトシン

子育て中三十路副業ブロガー。「天地無用!」の砂沙美ちゃんに魅了され、アニメの世界にどっぷり浸る。 アニメはとにかくシナリオ重視。芯のあるアニメが大好き。泣きたいけど泣かせにかかる要素は大嫌い。とにかくハッピーエンドで泣かせて欲しい人。

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